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三叉神経痛【さんさしんけいつう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

三叉神経痛
さんさしんけいつう
trigeminal neuralgia
三叉神経走路に沿って顔面に発生する疼痛発作。いわゆる顔面神経痛のこと。三叉神経の全領域を襲うことはまれで,普通は片側,さらに眼周辺,上顎,あるいは下顎というようにその一分枝に限られる。原因不明の特発性のものもあるが,明らかに原因となる基礎疾患がある場合はこれを取除き,あるいは対症的に各種の鎮痛剤で治療する。激痛の場合は,神経根部のアルコール注射 (アルコールブロック) が奏功することがある。原因としては,脳底腫瘍,髄膜炎,眼,鼻,歯の病気,腸チフスインフルエンザなどの感染症があり,発作は顔になんらかの刺激を受けたときに誘発される。疼痛部位にヘルペスの発生をみることもある。

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デジタル大辞泉

さんさ‐しんけいつう【三×叉神経痛】
三叉神経の分布領域に生じる痛み。顔半面にみられ、針を刺すような激しい痛みで、俗に顔面神経痛という。

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監修:松村明
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世界大百科事典 第2版

さんさしんけいつう【三叉神経痛 trigeminal neuralgia】
顔面の発作的かつ瞬間的(2~3秒)な電撃様の強い痛み。通常,40歳以上に発症し女性に多い。種々の因子により誘発され,顔面のある部分に触れたり,しゃべったり,あくびをしたり,物をかんだりすると起こる。触れることによって痛みを誘発する部位を引金点trigger pointといい,鼻翼,歯肉,硬口蓋,下口唇付近に多い。痛み以外には三叉神経障害の症状は認められない。病理学的にも三叉神経そのものには病変がみられず,大多数は三叉神経の脳幹進入部における血管圧迫による。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

さんさしんけいつう【三叉神経痛】
三叉神経の分布領域に起こる疼痛とうつう発作。多くは原因不明。顔面神経痛。

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日本大百科全書(ニッポニカ)

三叉神経痛
さんさしんけいつう
顔面に分布する三叉神経知覚枝領域に突発的におこる神経痛の総称である。脳腫瘍(しゅよう)、脳動脈瘤(りゅう)、副鼻腔(ふくびくう)の炎症や悪性腫瘍、むし歯、ウイルス感染症、全身性代謝性疾患などが原因のこともあるが、多くは原因不明であり、むしろこのほうを一般的に三叉神経痛とよぶ場合が多い。病因論的には諸説があって定説がまだないが、三叉神経の知覚枝そのものの加齢に伴う変化に関連しておこるとする説が有力である。ただし最近になって、三叉神経根に対する動脈、静脈、腫瘍の圧迫が原因であるとの説が有力であり、この圧迫を手術的に取り除く治療法、神経血管減圧術とともに注目を集めている。圧迫病変としては、大部分が上小脳動脈であり、一部に前下小脳動脈、腫瘍、静脈などがあげられる。
 発症は50歳以降で、女性にやや多い。症状は「電気が走るような」とか「針が刺さるような」などと表現される片側顔面に突然おこる激痛発作で、痛みの持続時間は数秒から長くても1分程度であるが、多くは反復する。また症状が、年余にわたって続くことも珍しくない。疼痛(とうつう)は、三叉神経の第2枝および第3枝にみられることが多く、第1枝は少ない。また、ときには二つの枝の範囲に及ぶこともあるが、両側性の発症は例外的である。なお、発痛帯(トリガーゾーンtrigger zone)とよばれる部位に触れたり押したりすると疼痛発作を誘発できることがあり、また会話や食物摂取などの顔面筋の動きで誘発される場合もある。
 患者の訴えを詳細に聞くことによって診断は確実であるが、原因疾患の有無を明らかにするため十分な検査が行われる。治療の中心となるのは、鎮痛剤、抗けいれん剤、精神安定剤、ビタミン剤といった薬物療法である。しかし、しばしば難治性で長期間続くため、神経そのものの切断術や、アルコール、グリセオールなどを注射して変性させる治療も試みられる。さらに場合によっては、頭蓋(とうがい)内での三叉神経知覚枝の切断、前述の神経への血管の減圧手術(神経血管減圧術)、定位的脳手術なども行われる。また、最近になってガンマナイフによる治療が有効であることがわかってきている。[加川瑞夫]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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精選版 日本国語大辞典

さんさ‐しんけいつう【三叉神経痛】
〘名〙 三叉神経の知覚枝に異常が起きて顔面に激痛を感ずる病気。原因不明で発作的に痛む特発性のものと、脳底腫瘍(しゅよう)、副鼻腔炎、虫歯などが原因で持続的に痛む症候性のものとがある。俗称、顔面神経痛。

出典:精選版 日本国語大辞典
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内科学 第10版

三叉神経痛(頭痛)
(5)三叉神経痛(trigeminal neuralgia)
概念
 三叉神経第2枝および第3枝支配領域に出現する短時間の電撃痛である.
分類
 ICHD-Ⅱでは,舌咽神経痛などとともに「頭部神経痛および中枢性顔面痛」に含まれる.血管性圧迫以外の器質的病変が原因となる場合は症候性三叉神経痛,それ以外は典型的三叉神経痛に分類される.
疫学
 10万人あたりの年間発症数は4.3人で,男女比は1:1.73と女性に多い.年齢が進むにつれ発症者が増加する.
病因・病態生理
 典型的三叉神経痛の原因は,三叉神経のroot entry zoneでの血管による圧迫とされている.
臨床症状・診断
 三叉神経支配領域の第2枝および第3枝領域に好発する一側性電撃様あるいは穿刺様の疼痛である.持続時間は数分の1秒〜2分と短い.多くの症例で,顔面の特定の部位に触れると神経痛が誘発されるトリガー域といわれる部位を有する.トリガー域は,口唇・鼻翼・鼻唇溝・頬・歯肉などに認められる.診断はICHD-Ⅱの診断基準に従う(表15-17-6).症候性三叉神経痛の原因には,多発性硬化症や類上皮腫・髄膜腫・神経鞘腫などの腫瘍がありこれらを鑑別する必要がある.
治療
 薬物療法が試みられ,不応例に対して神経血管減圧術などの外科的治療が考慮される.第一選択薬はカルバマゼピンであり,その他の選択薬としてはバクロフェン,クロナゼパム,フェニトイン,バルプロ酸などがある.[清水利彦・鈴木則宏]
■文献
日本頭痛学会・国際頭痛分類普及委員会訳:国際頭痛分類第2版 新訂増補日本語版,医学書院,東京,2007.
日本頭痛学会編:慢性頭痛の診療ガイドライン,医学書院,東京,2006.

出典:内科学 第10版
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三叉神経痛
どんな病気でしょうか?

●おもな症状と経過
 三叉神経痛(さんさしんけいつう)は神経痛の一つです。なんらかの原因によって神経が刺激され、その神経が支配している部分にそって激しい痛みを感じるのが神経痛です。
 三叉神経は顔面の感覚を脳に伝える神経で、眼神経(がんしんけい)(第1枝)、上顎神経(じょうがくしんけい)(第2枝)、下顎神経(かがくしんけい)(第3枝)の3本の枝に分かれています。三叉神経痛はこのうちのどれかの神経に非常に激しい痛みが生じる病気です。痛みは、通常、顔面の片側におこり、電気が走るような衝撃、焼け火箸(ひばし)が突き刺さるような痛みと表現されることもあります。
 歯みがき、洗面、ひげそり、ものをかむ、冷たい風に吹かれる、軽く顔に触れる、話すことなどによって突然痛みが誘発されます。数秒から数十秒と持続時間は短いのですが、くり返しおこり、痛みの激しさのために顔をしかめるような表情が特徴的な症状となります。
 あまりにも激しい痛みのためにうつ状態になったり、食事ができなくなったりして体調を崩すこともあります。患者さんにとってつらいのは、症状が進むにつれて、痛みが強くなり、さらに痛みがおこる回数も増えてくることです。

●病気の原因や症状がおこってくるしくみ
 原因が明確でない特発性と、なんらかの原因疾患のある症候性とに分かれます。特発性のものは第2枝、第3枝に多く、症候性は第1枝に多くみられます。症候性の原因としては、動脈硬化(どうみゃくこうか)などで形が変形した動脈や静脈が三叉神経に直接触れ、神経を圧迫することがあげられます。
 そのほか、炎症や外傷、帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルス、感染後の後遺症、多発性硬化症(たはつせいこうかしょう)、脳腫瘍(のうしゅよう)などが原因と考えられます。

●病気の特徴
 一般的にお年寄りに多いとされていますが、30歳未満に発症する場合は腫瘍が見つかることが多くあります。症状が現れるのは、冬よりは秋口、春先など急に気温が低下し、突然寒さを感じるような日に多くなっています。


よく行われている治療とケアをEBMでチェック

[治療とケア]長期にわたる可能性を理解し、痛みにあまり意識を集中しないようにする
[評価]☆☆
[評価のポイント] 痛みに関して意識を集中しないでおくことで、痛みが軽減する場合もあります。専門家の意見や経験から支持されています。

[治療とケア]特発性と症候性とを鑑別する(CT、MRI検査)
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] CT、MRI検査は、脳腫瘍、多発性硬化症の診断に有用です。深刻な病気との鑑別を行う重要性は信頼性の高い臨床研究によって確認されています。MRIによって血管が三叉神経を圧迫しているかどうか知ることができます。(1)

[治療とケア]特発性のものに対しては抗てんかん薬を用いる
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] いくつかの非常に信頼性の高い臨床研究によって、抗てんかん薬が三叉神経痛を軽減することが確認されています。(2)

[治療とケア]うつ傾向がみられる場合は抗うつ薬を用いる
[評価]☆☆
[評価のポイント] 痛みの発作が長引き、うつ傾向を認めた場合は、その症状を抑えるために抗うつ薬を用いることが専門家の意見や経験から支持されています。ただし、三叉神経痛そのものを治すことはできません。

[治療とケア]神経ブロックを検討する
[評価]☆☆
[評価のポイント] 神経ブロックとは、痛みを支配している神経に麻酔薬を注入し、痛みの伝達を遮断する治療法です。三叉神経痛に対して顔のむくみなどの副作用が臨床研究で報告されています。これらのことから、現在のところ、すべての患者さんに勧められる治療とはいえません。(3)

[治療とケア]微小血管減圧術(びしょうけっかんげんあつじゅつ)を検討する
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 抗てんかん薬によって症状の改善を認めない患者さん、また副作用などで服用が困難な患者さんには微小血管減圧術が行われています。これは、三叉神経痛の原因となっている脳の血管の神経への圧迫を手術によって取り除くというものです。手術後に症状が改善したとの臨床研究がいくつか報告されており、合併症も少なく、効果が確認されています。(4)(5)

[治療とケア]ガンマナイフによる治療を検討する
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 抗てんかん薬によって症状の改善を認めない患者さん、また副作用などで服用が困難な患者さん、全身麻酔下での手術にリスクのある患者さんには、ガンマナイフ治療が選択肢の一つと考えられています。(6)


よく使われている薬をEBMでチェック

抗てんかん薬を服用する
[薬名]テグレトール(カルバマゼピン)(2)
[評価]☆☆☆☆☆
[評価のポイント] いくつかの非常に信頼性の高い研究報告によって、三叉神経痛に対する抗てんかん薬の効果が確認されています。

カルバマゼピンの働きを助けるためにビタミン薬を併用する
[薬名]混合ビタミンB群
[評価]☆☆
[薬名]ビタミンB12
[評価]☆☆
[評価のポイント] いずれの薬も、専門家の意見や経験から支持されている薬剤です。

うつ傾向がみられる場合には抗うつ薬を用いる
[薬名]トフラニール/イミドール(イミプラミン塩酸塩)
[評価]☆☆
[評価のポイント] うつ症状が強い場合は、その改善のために抗うつ薬を用いる場合もあります。

さらに抗てんかん薬を追加する
[薬名]アレビアチン/フェニトイン/ヒダントール(フェニトイン)(7)
[評価]☆☆☆☆
[評価のポイント] フェニトインを単独で使用する場合は有効であるとの臨床研究があります。また、カルバマゼピンとの併用で効果が増加するかどうかはわかっていません。

[薬名]リボトリール/ランドセン(クロナゼパム)(8)
[評価]☆☆☆
[評価のポイント] 激しい痛みの軽減に効果があるという臨床研究があります。しかし、カルバマゼピンとの併用によって効果が増加するかはわかっていません。


総合的に見て現在もっとも確かな治療法
特発性か原因があるものかの区別を
 最初に、三叉神経痛がおきる原因があるかどうか、つまり特発性と、ほかに原因となる病気がある症候性との区別を確実に行います。そのためにCT検査やMRI検査が必要となります。
 特発性の場合は抗てんかん薬による薬物療法を行います。とくに、テグレトール(カルバマゼピン)がよく用いられています。
 この薬はてんかんばかりでなく、躁病、躁うつ病の躁状態、統合失調症の興奮状態に対して使用する薬です。
 テグレトール(カルバマゼピン)についてはよく研究されていて、効果があることを示す非常に信頼性の高い臨床研究の報告があります。

血管が神経を圧迫しているものには手術を
 抗てんかん薬で効果の現れない患者さんや副作用によって抗てんかん薬を用いることのできない患者さんでは外科的な治療が検討されます。
 外科的な治療としては微小血管減圧術の効果がいくつかの臨床研究によって証明されています。三叉神経痛の多くは血管が神経を圧迫するために生じています。微小血管減圧術はその圧迫している血管を神経から引き離し、血管と神経の間にできたすき間にクッションとなるものを入れこみ、再び圧力が加わらないようにするものです。
 顕微鏡下で行う手術なので、比較的患者さんの負担は軽いと考えられますが、手術を行う医師の熟練が要求されます。十分に専門医と検討したうえで選択すべきでしょう。

(1)Gronseth G, Cruccu G, Alksne J, Argoff C, Brainin M, Burchiel K, Nurmikko T,Zakrzewska JM. Practice parameter: the diagnostic evaluation and treatment of trigeminal neuralgia (an evidence-based review): report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology and the European Federation of Neurological Societies. Neurology. 2008 Oct 7;71(15):1183-1190.
(2)Bennetto L, Patel NK, Fuller G. Trigeminal neuralgia and its management. BMJ. 2007 Jan 27;334(7586):201-205.
(3)Bittar GT, Graff-Radford SB. Peripheral streptomycin/lidocaine injections versus lidocaine alone in the treatment of idiopathic trigeminal neuralgia. A double blind controlled trial. J Craniomaxillofac Surg. 1990;18:243-246.
(4)Barker FG 2nd, Jannetta PJ, Bissonette DJ, et al. The long-term outcome of microvascular decompression for trigeminal neuralgia. N Engl J Med. 1996;334:1077-1083.
(5)Zakrzewska JM, Akram H. Neurosurgical interventions for the treatment of classical trigeminal neuralgia. Cochrane Database Syst Rev. 2011 Sep 7;(9).
(6)Régis J, Metellus P, Hayashi M, Roussel P, Donnet A, Bille-Turc F. Prospective controlled trial of gamma knife surgery for essential trigeminal neuralgia. J Neurosurg. 2006 Jun;104(6):913-924.
(7)Birse F, Derry S, Moore RA. Phenytoin for neuropathic pain and fibromyalgia in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2012 May 16;5.
(8)Smirne S, Scarlato G. Clonazepam in cranial neuralgias. Med J Aust. 1977;1:93-94.

出典:法研「EBM 正しい治療がわかる本」
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