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リテラシー

デジタル大辞泉

リテラシー(literacy)
読み書き能力。また、与えられた材料から必要な情報を引き出し、活用する能力。応用力。
コンピューターについての知識および利用能力。→コンピューターリテラシー
情報機器を利用して、膨大な情報の中から必要な情報を抜き出し、活用する能力。→情報リテラシー

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監修:松村明
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世界大百科事典 第2版

りてらしー【リテラシー】

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大辞林 第三版

リテラシー【literacy】
読み書き能力。また、ある分野に関する知識やそれを活用する能力。

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精選版 日本国語大辞典

リテラシー
〘名〙 (literacy) 読み書きの能力。また、ある分野に関する知識や能力。「情報リテラシー」

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リテラシー
リテラシー
literacy
リテラシーとは,読み書き能力,識字力のことである。リテラシーは話しことばと異なり,時間的・空間的に言及されるものや発話文脈から独立していることから抽象的思考の発達に欠かせないもので,話しことばから書きことばへのシンボル体系の変化が人間の精神過程に大きな影響を与えるものと考えられてきた。幼児初期から子どもはリテラシーに接近し,自発的にそれを習得し始める。幼児期には,絵本を読み聞かせられ,新聞を読むおとなの姿,街の看板を見て,自然とリテラシーを体験している。就学を機に,子どもはリテラシーを学習言語として系統的に学習するようになる。リテラシーが導入されると,コミュニケーションの相手は「今」「ここ」に限られるものではなく,時間・空間を越えて広がる。生活言語としての話しことばも質的に変化する。幼児期には1対1のコミュニケーションが中心であるが,就学により1対多のコミュニケーションに移行する。発話文脈の手がかりを利用できる1次的ことばprimary wordsから,文脈独立の2次的ことばsecondary wordsへ移行する(岡本夏木,1982)。さらに児童期後期には,抽象的思考の発達と軌を一にして,言語を対象化するメタ言語能力meta-language abilityに支えられた3次的ことばthird wordsへと移行する(内田伸子,2004)。伝達の手段であることばと考える手段としてのことばは,連携協働しながら重層的に発達していく。このように,リテラシーの習得を機に,子どもの意識は「今」「ここ」を越えて広がる。また,リテラシーはことばや思考について対象化してとらえることを可能にする。考える手段としてのことばは,いっそう確実なものになる。個人的なやりとりの中で育まれた生活言語は質的に改変され,公共性の高い言語を獲得するようになる。

【文字学習の特質】 子どもが文字の世界に足を踏み入れるのは早い。小学校入学までにほとんどの子どもはひらがなを読め,お話の絵本を一人で読めるようになり,自分の名前をひらがなで書ける。また,簡単なことばを書いたり,お話や手紙を書くといった活動を始めている。ほとんどの子どもがひらがなを読み,文字を書くための指先の運動機能も成熟段階に達するので,リテラシーの習得はどんどん早期化する傾向がある(内田,1989; 東洋ほか,1995;内田ほか,2008)。

 ところが,幼稚園や保育園で組織的な文字指導をしているところは1割程度にすぎない。親もリテラシーに触れる環境は用意しても,系統的に学習させることはしていない。親も保育者も子どもに聞かれたら教えることはあっても,幼児期の読み書き能力については子どもの自発性に任せるのがよく,組織的な文字教育は小学校に入ってから学べば十分だという意見が圧倒的に多い(内田ほか,2008,2009)。このような親や保育者の意識からも,また実際の文字環境の実態からいっても,子どもの読み書き能力は組織的な学習を通してではなく,生活の中で文字に関連した活動を目にし,参加することによって自然と覚えてしまうらしい。

 「字を読めると良いことがあるか」「文字を書けると良いことがあるか」という問いで,リテラシーの機能に気づいているかどうかを調査すると,リテラシーの習得の早期化と軌を一にして,コミュニケーションの手段であることに気づくのも早期化している。1989~1995年の調査(内田,1989;東ほか,1995)では「字が読めると(書けると)ママが誉めてくれる」という回答がほとんどであったが,2008年の調査(内田ほか,2008,2009)では4~5歳児の3割が「絵本が一人で読めるからいい」「駅の名前が読めるからいい」「お手紙が書けるからいい」と回答し,小学1年生(3学期)のほとんどが「字がたくさん書いてある本が読めるから」「自分で読んでも意味がわかるようになったから」「ママと交換日記ができるようになったから」「引っ越したお友だちにお手紙が出せるから」「絵本が作れて楽しいから」などと回答し,リテラシーの機能を認識していることがうかがわれた。

 文字の機能や便利さの認識は,人から教えられたというより,一人ひとりの読み書き経験を通して獲得されるものらしい。文字は自己を表現する手段であり,知識を習得するための道具である。実際に使ってみなければ,役立つものだとは気づかない。文字を使い,それを媒介にして何かを学んだり,自己を表現するという経験が蓄積されて初めて道具としての価値がわかるものなのであろう。ここに,文字というものの特異性が感じられる。「文字って便利だな」というような実感をもち始めると,文字をもっと知りたい,速く読めるようになりたい,きれいに書けるようになりたいなど,文字習得への動機づけが高まり,それに伴って文字習得が加速されるようになる。

【識字への文化的価値づけ】 子どもはリテラシーを使うことの意義を自覚する前からリテラシーに関する活動を開始する。子どもは生活や遊びを通してたやすくリテラシーを習得してしまう。文字は直接的に教えられたかどうかはあまり重要ではない。実際に,直接文字を教えられた子どもよりも,日常,本や新聞を読むおとなの姿を目にしている文化的環境にある子どもや,マザーグースなどの詩が好きで暗唱できる子どもの方が読み書き能力が高い(MacLean,M.,Bryant,L., & Bradley,P.,1987)。日本では昔から読み書きができることに対する価値づけが高かった。親たちは子どもが文字に興味を示し,文字にかかわる活動に従事しているのを目にすると,これを励まし,認めようとする。文化が読み書きへの価値づけを行ない,子どもたちが文字に対して興味をもち,それによって,子どもが容易に学習できるようにしむけているのであろう。

【文字習得の基盤】 私たちが聞いたり話したりしている語は物理的には連続音であるから,文字コードに変換するためには連続音を文字コードの単位に分割し,対応させることができなくてはならない。これを音韻的意識phonemic awarenessとよんでいる。音韻的意識とは語の音韻分解phonemic segmentationと音韻抽出phonemic abstractionからなる。天野清(1988)によると,語の音韻分解というのは,語を構成している音韻の系列を分析し,その音韻の順序,およびその音韻の言語学的特性の理解に基づいて,語の音韻構成を知ることを指している。日本語は音節単位であるため,/ウサギ/が/ウ/,/サ/,/ギ/という3音節にからなっていることを知ること,すなわち音節分解syllabic segmentationができなくてはならない。一方,英語の場合は/desk/が/d/,/e/,/s/,/k/の四つの単音からなっていることを知る技能のことである。さらに,音韻抽出というのは,ある語がどういう音からなっているか,音韻,音節を分離し,抽出する機能を指している。/ウサギ/の最初の音節は/ウ/,最後の音節は/ギ/,真ん中は/サ/というように取り出す技能のことである。

 天野(1986)は,音韻的意識は,「コドモ」「トコヤ」「タケノコ」のように,/コ/が語頭・語中・語尾にある場合にうまく/コ/ド/モ/と分解(音節分解)し,積み木で配列するかどうかを見て音節分解の能力を調べ,さらに自分が言ったことばの中に/コ/の音が含まれていたかを答えさせることによって音韻抽出能力を調べた。たとえば,「トコヤ」がどんな音からできているか,1音ずつ区切って発音させる。その後,語頭・語中・語尾の積み木を順に指して「この積み木は何の音?」と尋ねた。その結果,幼児期後半までには全員が正解できる。音韻的意識(音節分解と音韻抽出)は読字数と高い相関がある。音節を分解し音韻を抽出できるようになるに伴い読字数が増えていく。音韻的意識は文字習得の基盤として不可欠である。

 音韻的意識が低い場合,すなわち音声コードを文字コードに対応させることができない場合は,かな文字の学習は教えてもきわめて困難である。しかし,このような音韻的意識の発達を促すような訓練により,かな文字の習得が促進されるという。大六一志(1995)は,発達遅滞児を対象にして「モーラ意識」(天野は「音節分解」とよんでいるが,直短音のみを材料にしたためモーラと音節は同じであることから,モーラが用いられている)を形成した後,かな文字読みが可能になったことを見いだした。

【特殊音節の学習】 音節分析は単音分析よりもやさしいため,日本語のかな文字の体系は,読み書きの入門期の子どもにとっては学習しやすい文字体系である。しかし,日本語のかな文字の中で,基本音節の文字コードは対応関係があるため学習は容易であるが,各種の特殊音節――長音(ヒコーキ),拗音(キンギョ),拗長音(チョーク),促音(コップ),撥音(パン)など――は学習が難しい。特殊音節の場合には,単に語を構成している音節を識別し,その順序性を分析したうえで,さらに特殊音節の言語的な特性についての知識(特殊音節の「モデル構成行為」)に基づいて音節構造を知らなくてはならないからである。天野(1988)は,幼児や小学校低学年の学習不振児を対象にして,積み木やカードなど視覚的補助教材を用いた表記法規則の学習を促す教育プログラムによる形成実験を行ない,音節分析能力を形成しなければ,特殊音節の読み書きの学習が困難であることを見いだしている。

 特殊音節の分析は,表記法規則の学習が前提になっているため,単音分解よりも難しい。単語をひらがなコードに符号化する過程は,単に個別の音と符号化する機械的・連合的な学習過程ではなく,「ことば」としての意識を媒介している。すなわち高橋登(1986)によると,成人と同様,子どもも有意味な単語として一挙に符号化するという特性をもっているという。ひらがなに符号化するという活動は,ことばが埋め込まれている文脈や意味を含み込んだもの,いわば文化や歴史を背負い込んだものなのである。ひらがな読みは最初は個々の音と文字の連合から始まり,意味のあることばとしての意識,音韻的意識,表記法規則など,天野(1986)のいうさまざまな言語学的特性を習得するのに呼応して,時間をかけて熟達していくものと考えられる。したがって,文字が習得できない場合は,音を符号化できないのか,それとも単語など意味全体を把握する力が不足しているためか,あるいは語彙などを含めた言語生活が乏しいためなのかの原因を探らなくてはなるまい。

【音韻的意識を促す遊び】 子どもたちは,こうした音韻的意識の発達を促すような遊びに従事している。幼児初期の子どもたちが好んでする「ことば遊び」も,音韻的意識を発達させるものである。さらに,音節を取り出す遊びの例として,「しりとり」がある。子どもたち同士,親子の間でよく行なわれる遊びであるが,前の人が言ったことばの最後の音節を取り出し,その音節から始まることばを次の人が言うのが基本ルールである。ただし,「きんぎょ」のような特殊音節で終わることばへの対応は概して難しく,正しく実行されるには,まず特殊音節の文字の習得が前提になる(無藤隆,1986)。また,高橋(1997)によると,しりとり遊びができるようになるためには単語の語尾音の抽出が前提になるが,十分に音韻的意識が形成されていない段階でも,子どもが遊びに参加する中でこの音韻的意識が形成されていくという。このような遊びに参加するうちに,音韻的意識の発達が促されるのであろう。

【リテラシー習得への動機づけ】 幼児期の文字習得は,遊びの中で自然に体得されるという特徴がある。しかし,自然に体得される学習においては,組織的な学習に比べて個人差や性差,文化差が大きい(天野,1986;内田,2008ほか)。幼児期の文字学習は外から強制されるものではない。子どもの興味関心が文字を覚えることだけに偏っていないところにこそ意味があるのである。外界の物(もの)や事(こと)に対する幅広い興味の網の目に,文字の存在も引っかかってくるにすぎないのである。文字への興味は子どもによって差がある。早くから興味を示す子もそうでない子もいる。おしゃべりをする,話を聞くという言語体験の乏しい子ほど文字に関心を示さないという保育者の報告もある。幼児期にこれほど大きな個人差があっても,就学してリテラシーの系統的な学習が導入されると,1年生の6~9月には個人差や性差は解消され,遅れていた子どもが追いついてしまう(内田,1989)。しかも,遅れていた子どもほど,リテラシーの機能に気づいており,「字をスラスラ速く書けるようになりたい」「字をうまく,上手に書けるようになりたい」という動機づけも高い。物語や説明文を書かせると,立ち上がりの遅れていた子どもの方が,豊かな内容の作文が書けるのである。

 では,幼児期に読み書き能力を習得することが,小学校の国語学力テストの成績を予測するであろうか。幼児期にリテラシー調査に参加した5歳児920名を1年生3学期まで追跡した(321名;追跡率33%,内田ほか,2010)。図は幼児期のリテラシーと国語読解力(文章読解力,三段論法推論,文章の接続関係,カタカナ・漢字課題など,PISA型読解力の課題から構成)の関係を示している。幼児期に語彙が豊かであり,模写力(図形模写,指先の運動技能の発達程度の測定)が高い子どもからは,国語読解力と有意な因果関係があることが検出された。この結果は東ら(1995)と同様の結果である。これらは,幼児期の言語生活が豊かであるときには小学校でも言語生活が豊かに展開することを示唆している。幼児期にあっては,リテラシーが学ばれる時期や,リテラシー習得の遅速よりも,リテラシーの機能を手段にして,自己表現するための内面-想像力imaginationや自律的思考力autonomous thinkingが育っているかどうかが問われるべきであろう。

【リテラシーと学力】 リテラシーの概念は,時代や社会的な背景により,あるいは研究者や団体により,さまざまな定義をもちうる。伝統的には,母語で読み書き計算(3R,reading/writing/arithmetic)ができることや,自筆署名できることなどが識字の指標とされる。それらが,成人が社会生活を営むうえで重要な能力だと考えられるためである。このようにリテラシーを,成人がなんらかの社会的・文化的実践に参加するときに必要とされる,書記言語を用いた情報活用能力およびコミュニケーション能力としてとらえる立場は,識字率の調査をしているユネスコ(UNESCO)や国際学習到達度調査Programme for International Student Assessment(PISA)を実施している経済協力開発機構(OECD)においても見られるものである。たとえば,ユネスコでは「多様な文脈における印刷ないし筆記された材料を用いて,確認・理解・解釈・作成・コミュニケーション・計算を行なう能力。個人が自分の目標を達成可能にしたり,知識や能力を高めたり,社会で幅広く活躍するための一連の学習も含まれる」,PISAでは「自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために,書かれたテキストを理解し,利用し,熟考し,これに取り組む能力」がリテラシー(読解力)とされている。このようなリテラシー概念の高度化は,時代や社会の変化を反映したものだといえる。

 現代社会においては,十全な社会参加を可能にするためには,読み書き技能の習得を超えた能力が必要とされる場合が多い。たとえば,母語の読み書き能力があるという意味で識字者であっても,書類作成や時刻表の読み取り,料金の計算など社会生活において必要とされる文字による情報を伴う作業が困難である場合,これを機能的イリテラシーfunctional illiteracyとよぶ。インターネットやコンピュータ,スマートフォン,携帯電話などのIT機器を十分に活用できない場合も含まれる。現代社会において,十全に社会参加するためのリテラシーは変化し,基礎的技能が高度化しつつあるといえよう。機能的イリテラシーであることは,社会的・経済的に弱い立場に陥りやすいことを意味する。また,リテラシーは,個人の職業選択や収入に結びつきやすいだけでなく,国の経済や社会の発展にもかかわる問題でもある。だからこそ,経済協力開発機構による国際比較調査の対象となってきた。

 PISAは,義務教育の最終段階の生徒を対象として,読解・数学・科学の3領域のリテラシーを測定することを目的としている。読解のリテラシーに関しては,生徒の読解プロセスとして,テキスト中の情報へのアクセス・取り出し,テキスト中の情報の比較・推論を伴う統合・解釈に加えて,テキストの内容や形式について自分の知識や経験,テキスト外の知識を用いる熟考・評価の観点が設定されている。提示するテキストの形式は,連続型continuousと非連続型non-continuousとに分けている。連続型テキストとは,文・段落から構成される一連の文章であり,物語・解説・議論などが含まれる。非連続型テキストにはグラフ・表・地図・広告などが含まれる。ほかに用途・状況などの設定など,多面的な評価が図られている。これは,PISAでは「成人後の生活に関連する活動の中で,多くの種類の書かれた資料に遭遇する」ことを踏まえているためであり,より高度化そして細分化していることがわかる。たとえば2009年の在宅勤務に関する問題では,二人の意見の性質や内容の異同などの関係性を評価し多肢選択させる問いと,在宅勤務が難しい種類の仕事を理由とともに自由記述させる問いで構成されている。

 PISA型読解力の概念は,日本の教育にも影響を与えた。2004年末に公表されたPISAでの日本の高校生の読解力の結果を受けて,2005年に文部科学省は「これからの時代に求められる読解力の養成には,教科の枠を超えた共通理解と取り組みが必要だ」とし,読解力向上プログラムとして,テキストを理解・評価しながら「読む力」を高める取り組みの充実,テキストに基づいて自分の考えを「書く力」を高める取り組みの充実,さまざまな文章や資料を読む機会や,自分の意見を述べたり書いたりする機会の充実などの方針を打ち出している。これらの取り組みは教科横断的な性格をもつが,リテラシーが特定の共同体の中での情報活用能力であり,かつコミュニケーション能力であることから,領域固有のリテラシーの獲得・発達の必要性も指摘されている。

 領域固有リテラシーdomain-specific literacy,あるいは高次リテラシーhigher order literacyとよばれるリテラシーは,特定の共同体で必要とされたり好まれたりする認知・行動様式に基づくリテラシーである。たとえば,歴史学者は残された記録から当時の出来事を解釈・推論する。具体的には,新たに入手した資料や既存の資料について分析し信頼性を吟味しつつ,事象を文脈化し,確証的に資料に当たって読み進める。このように分析的・批判的に資料を読み解き,解釈するという作業が,歴史学者が行なっている歴史についての思考を支えるものであり,歴史リテラシーといえる。発揮される文脈や対象も領域固有的であり,文脈依存的であるから,歴史学者の場合でも,異なる学問領域の読解時には,歴史リテラシーは必要とされない。また,同じ領域の文章であっても歴史小説を読むときにも,あるいは歴史資料に当たるときであっても,目的が誤字脱字チェックである校正読みの場合には,選択される方略は異なる。どの領域の文章を,何の目的で読むかで必要とされるリテラシーは異なってくる。

 また,近年提唱されている新しいリテラシーnew literacy研究では,より広い社会的実践に埋め込まれた形で展開される文化的なリテラシーが想定されたり(Gee,J.P.,1991,1996),変化しつづけるインターネットなど情報通信技術information and communication technology(ICT)を活用するスキルや方略,特性を包含する概念が想定されたり(Leu,D.J. et al.,2004)するなど,新たな展開を見せている。

 このように,社会で必要とされているリテラシーが,高度化・細分化のようにつねに変化しているという点から考えると,教育の目標として,特定のリテラシーを支えるスキルや方略を獲得するだけでなく,変化に対応しうる適応的リテラシーadaptive literacyの獲得をも視野に入れる必要性を指摘する声もある。 →作文心理学
〔内田 伸子〕・〔深谷 優子〕

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