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ホモ・サピエンス

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

ホモ・サピエンス
Homo sapiens
ラテン語で知恵ある人,賢い人の意であり,一般に動物分類学上の学名としての現生人類。本来は人間を,英知をもつ存在として規定する哲学上の言葉として用いられたが,18世紀中頃,スウェーデンの生物学者 C.リンネは,生物の体系的分類を行うにあたり,この語をもって人間を表わす学名とした。その後人類化石が多数発見され,人類進化の実相が解明されるにいたって,あらためて地球上に今日生存する人類は,人種の違いはあってもすべて同一種であることが確認され,同時にそれに対してホモ・サピエンスの学名が適用された。このことにより現生人類の一体性が強調されるようになった。後期旧石器文化をになったクロマニヨン人や日本の縄文時代人なども同じホモ・サピエンスの仲間に入れられ,ネアンデルタール人は,その身体上の特性から,ホモ・ネアンデルターレンシスと呼ばれ,ホモ・サピエンスとは種を異にすると考えられていたが,1960年代になって,ネアンデルタール人も脳の大きさは現生人類と変らないこと,その中期旧石器文化は技術的にかなり高度であること,精神性も高いこと,身体特徴も進化学的に現生人類と連続することなどが明らかになってきた。その結果ホモ・サピエンスは現生人類とネアンデルタール人の両者を含むものとされるにいたった。両者を区別するためには三名法を用い,前者はホモ・サピエンス・サピエンス,後者はホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシスと呼ぶ。

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知恵蔵

ホモ・サピエンス
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世界大百科事典 第2版

ほもさぴえんす【ホモ・サピエンス】

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日本大百科全書(ニッポニカ)

ホモ・サピエンス
ほもさぴえんす
Homo sapiens
現生人類を含む、直立姿勢を完成した脳の大きな人類。もともとギリシア哲学以来、人間の本質は英知の優れていることにあると考えられてきた。これに応じて、賢い人間という意味でこの名がある。18世紀中葉、リンネは動物分類表の作成にあたり、この名をもって人間の学名とし、霊長類のなかに位置づけた。
 ところが19世紀後半にネアンデルタール人が発見されるに及び、これをホモ属に含まれる近縁種として、ホモ・サピエンスを現生人類に限った。その後、化石人類の研究が進むとともに、ヨーロッパ出土のクロマニョン人、シャンスラード人、グリマルディ人、中国出土の山頂洞人、柳江人、ジャワ出土のワジャック人などは化石現生人類ということで、ホモ・サピエンスのなかに入れられた。その特徴は、頸部(けいぶ)を含めた直立姿勢の完成、大きな脳、程度はさまざまだが退縮した顎骨(がくこつ)と歯、発達しない眉上弓(びじょうきゅう)があげられ、とくに頤(おとがい)の存在は歯槽(しそう)部の退縮によるものであるが、現生人類である証明とみなされるようになった。その文化は後期旧石器時代以降、中石器時代、新石器時代、金属器時代を経て今日に至る発展を遂げたとされた。同時にその優れた適応力により、ほとんど地球全体に分布するものとなった。また優れた音声言語能力がこの発展の原動力とみなされるに至った。
 しかし、研究が深化するにつれ、ネアンデルタール人は表面的に現れた以上にその道具製作の能力が高く、知能が優れ、死者を弔うほど情緒が豊かであることが判明するに至り、改めて脳の大きなことが確認され、その結果、ネアンデルタール人もホモ・サピエンスであるとみられるに至った。つまり、中期旧石器文化以後の文化はホモ・サピエンスに属するものとなった。なお、従来からの現生人類をいうときはホモ・サピエンス・サピエンス、ネアンデルタール人はホモ・サピエンス・ネアンデルターレンシスと、3名法で表すこともある。ちなみに、脳の大きさに関する限り、ネアンデルタール人以後、人類は進化していないといわれるのも、その間の消息を述べているといえる。[香原志勢]

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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