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ペプシン

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

ペプシン
pepsin
脊椎動物の胃に存在する蛋白質分解酵素 (プロテアーゼ) 。蛋白質ペプチド鎖中特にベンゼン核をもつアミノ酸残基,および2塩基性アミノ酸残基の隣のペプチド結合を加水分解する。胃液ペプシノーゲン,市販粗製品からさらに純化すると結晶標品が得られる。トリプシンやフィシンなどと異なり,エステルやアミドを加水分解しないが,ペプチド転移作用はあり,またミルク凝固作用もある。ペプシンのほかに,ペプシンBというペプシンによく似たプロテアーゼがブタの胃粘膜から得られている。

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デジタル大辞泉

ペプシン(pepsin)
胃液に含まれるたんぱく質分解酵素。前駆体のペプシノーゲンとして分泌され、胃液中の塩酸により活性化されたもの。たんぱく質をプロテオースないしペプトンの段階まで消化する。

出典:小学館
監修:松村明
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栄養・生化学辞典

ペプシン
 胃の胃小か(窩)にある主細胞から分泌される前駆体ペプシノーゲンが胃酸によって活性化されて生成するプロテアーゼ.至適pHが2付近にあり,カルボキシルプロテアーゼに属する.

出典:朝倉書店
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世界大百科事典 第2版

ペプシン【pepsin】
消化酵素の一つ。胃粘膜の主細胞から胃液中に分泌される,酸性領域で活性をもつタンパク質分解酵素。不活性の前駆物質ペプシノーゲンpepsinogenが,胃液の酸性条件下で,自己触媒的に分子の一部が分解され活性化してペプシンとなる。分解の程度によるが,不均一で単一物質ではない。分子量は3万5000付近で,至適pHは2前後である。胃液中にはペプシンAが多量に存在し,そのほかB,Cも存在する。ペプシンの分泌は,十二指腸粘膜から分泌される消化管ホルモン,セクレチンにより促進される。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

ペプシン【pepsin】
タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の一。脊椎動物の胃液中に前駆体ペプシノーゲンとして分泌され、塩酸または既存のペプシンの作用でペプシンに変わり、タンパク質を分解する。

出典:三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)

ペプシン
ぺぷしん
pepsin
脊椎(せきつい)動物の胃液に含まれている代表的な消化酵素で、アスパラギン酸プロテアーゼ(酸性プロテアーゼ)の一つ。A、B、Cの3種があるが、通常ペプシンといえば主成分であるペプシンAをさす。BはAよりも特異性が狭い(高い)。Cの正式名はガストリシンgastricsinで、特異性はA、Bより狭い。1783年イタリアのスパランツァーニが胃液中に存在を初めて確認、1836年ドイツのシュワンが命名した。これが酵素中最初の命名となった。1930年アメリカのノースロップ(1946年ノーベル化学賞受賞)がプロテアーゼとして最初に結晶化した(酵素としてはウレアーゼに次いで2番目)。前駆体のペプシノゲンは、1880年代にラングレーJohn Newport Langley(1852―1925)により発見され、1938年ヘリオットRoger M. Herriott(1908―1992)により結晶化された。
 ペプシンAはブタの場合、胃粘膜(胃底腺(せん))主細胞からアミノ酸数371のペプシノゲンとして分泌され、これが胃液の酸性条件下で自己触媒的に、あるいは既存のペプシンによってアミノ末端からアミノ酸数44のプロペプチドを切り離して327とし、分子量約3万2700のペプシンとなる。ただし、自己消化が激しいので不均一とされている。切り離されたプロペプチドはペプシンを阻害する。ペプシンの全アミノ酸配列は、1973年に明らかにされた。これによると、68番目のセリンにはリン酸が結合しており、またジスルフィド結合(S‐S結合)が三つある。酸性アミノ酸を多く含むのに対して塩基性アミノ酸はごくわずかなために、等電点は水素イオン濃度指数(pH)1付近である。さらに、分子の立体構造も、1975年に分解能2.7オングストローム(Å)のX線解析により明らかにされた。これによると、加水分解されるタンパク質やポリペプチド鎖のはまり込む裂け目(クレフトcleft)が活性部位としてあり、そのサブサイトはS4-S'3の7残基分になっている。基質になるタンパク質やペプチドの7残基のアミノ酸を認識してくわえ込む。この中央部の活性部位にアスパラギン酸二つ(Asp-32、Asp-215)とセリンSer-72があって、これらの共同作用によりアミノ‐酵素中間体を経て加水分解が進む、つまりペプチド結合が切られる。ペプシンの至適pHは2前後なので、胃の中のように酸性のときだけ作用し、中性では活性がない。多くのタンパク質を分解するが、アミノ酸を遊離することはまれである。特異性はあまり厳密ではないが、チロシンやフェニルアラニンなどの二つの芳香族アミノ酸の間のペプチド結合がもっとも速く切断される。酸性アミノ酸と疎水性アミノ酸(イソロイシン、ロイシン、メチオニンなど)の間の結合もよく切断される。また、ペプチド結合やエステル結合の加水分解のほか、ペプチド転移反応やペプチド結合の形成も触媒する。
 なお、胃液ペプシンによく似た酵素がペニシリウム属のアオカビからみいだされ、ペニシロペプシンとよばれている。さらに、尿中のペプシンはウロペプシンとよばれている。その他、30を超えるペプシンの仲間がある。
 放線菌のつくる低分子のペプスタチンなどは、これら一群のペプシンに対する強力な阻害剤で、胃潰瘍(いかいよう)を抑制する。アルツハイマー病におけるβ(ベータ)-セクレターゼもペプシンの仲間で、これがBACE-1と同一であることが明らかになっている。2003年、緑茶カテキンが、BACE-1の活性を阻害することが明らかになった。アルツハイマー病の予防が可能になることになり、これは大きな朗報といえよう。[野村晃司]
『三好秋馬・松尾裕編『ペプシンの基礎と臨床』(1974・新宿書房) ▽大江慶治他編『H2受容体拮抗剤の諸作用とその問題点』(1992・医学図書出版) ▽ペルツ著、黒田玲子訳『タンパク質――立体構造と医療への応用』(1995・東京化学同人)』

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精選版 日本国語大辞典

ペプシン
〘名〙 (Pepsin pepsin) 脊椎動物の胃液の中にある蛋白質を分解する酵素。酸性液中で作用する。ペプシネ。〔舶来語便覧(1912)〕

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