腸詰めともいう。肉を塩漬
(えんせき)後、磨砕あるいは細断したものを調味してケーシングに詰め、薫煙
(くんえん)、湯煮
(ゆに)などの処理をした加工品。語源はラテン語の塩漬けsalsusに由来するという説と、雌豚sauとスパイスのセージsageの合成語であるという説とがある。ソーセージは、ハムや乾肉よりも加工度の高い食品である。古い記録としてホメロスの『オデュッセイア』(前8世紀末)に、兵士たちがひき肉を腸に詰めたものを食べたと書かれている。しかし、加工食品として一般化したのは1300年ごろ、ヨーロッパにおいてである。日本では幕末のころ、外国人によりもたらされた。1877年(明治10)の第1回内国勧業博覧会の出品リストに腸詰めがある。生産が本格的に始まったのは第一次世界大戦後である。
[河野友美・山口米子]原料肉は豚肉が中心であるが、牛肉、羊肉など他の畜肉のほか、レバー、血液などを主材料としたものもある。豚肉以外の肉は国によって規定が異なり、日本では畜肉として豚肉以外に牛肉・馬肉・羊肉・山羊
(やぎ)肉が、また、つなぎ肉に鶏肉・兎肉
(うさぎにく)・魚肉も使うことができる。副材料としてチーズ、グリーンピース、ピメント(甘味種の赤ピーマン)、卵、牛乳などを用いるものもある。原料肉を3~4センチメートルの角切りにし、塩と硝酸塩および亜硝酸塩(発色剤)を加えて一昼夜ぐらい塩漬(キュアリング)する。これをひき肉にして調味料や副材料を加えてケーシングに詰める。さらに、薫煙、湯煮、乾燥などの加工をする。生肉を詰めただけの生
(なま)ソーセージもある。ケーシングはブタやウシ、ヒツジの腸など天然のものと、セルロース系、プラスチック系の人工のものとがある。
[河野友美・山口米子]水分が多い(56~65%)ドメスチックソーセージと、水分を35%以下に調節したドライソーセージ、中間のセミドライソーセージがある。ドメスチックソーセージには次のようなものがある。(1)生ソーセージ(フレッシュソーセージ) ドイツの白ソーセージをはじめ、荒びき肉やパセリ入り、ピメント入りなど、(2)薫煙ソーセージ(スモークドソーセージ) 香り程度に薫煙し、湯煮したもの。細い小形のウィンナーソーセージ、太いフランクフルトソーセージ、さらに太いボローニャソーセージ、グリーンピース入りのリオナソーセージなど、(3)クックドソーセージ 湯煮加工したもので、仕上げに軽く薫煙するものもある。レバーソーセージ、ドイツのツンゲン、血液と豚肉を用いるブラッドソーセージ、数種のハムやソーセージを混ぜるガランティーヌ、豚の頭や鼻皮を原料にしたヘッドチーズなど。
それぞれ各国に多くの種類のものがある。日本では魚肉が主成分の魚肉ソーセージは、JAS
(ジャス)(日本農林規格)上は魚肉練り製品に入る。
ドライソーセージの代表はサラミソーセージで、イタリアンサラミ、ジャーマンサラミなどスパイスや原料肉に特徴のあるものがある。牛肉、豚肉、豚脂肪と調味料をあわせ、ケーシングに詰め、3か月間ほどゆっくり乾燥させる。乾燥後薫煙するのがセルベラートソーセージで、スモークサラミともいう。湯煮するタイプがモータデラソーセージで、水分が残るので柔らかい。ソフトサラミあるいはクックドサラミともいう。
[河野友美・山口米子]タンパク質を13~15%(サラミソーセージなどドライソーセージでは25%)含む。ソーセージは、ハムに比べて脂肪が多く使われるため、高エネルギー食品でもある。種類によって原材料が異なるので栄養価も差がある。塩分はサラミソーセージが4%近く、ウィンナーソーセージで2%含まれる。
[河野友美・山口米子]ソーセージの品質は原料肉や添加されるつなぎ、添加物で左右される。原料肉の種類については、包装品であれば食品衛生法とJASの品質表示基準によって材料表示が義務づけられている。また、JASの規格のあるものではJASマークとともに品名とその品質が規格化されているので、名称からも判断できる。材料名は使用量の多いものから表示される。豚肉や牛肉のみのものは、とくに品質が優れたものが多く、風味もよい。馬・羊など、肉の種類が多くなるほど、デンプンや各種の添加物や調味料が多くなる傾向がある。
[河野友美・山口米子]生ソーセージ以外はそのままで加熱せずに食べられるものが多い。ウィンナーソーセージ、フランクフルトソーセージなど細いものでケーシングごと食べるものは、ゆでる、焼くなどすると表面が加熱殺菌され、風味をよくすることができる。加熱しないでそのままスライスして食べる場合、スライスした日、または翌日には食べるようにする。とくに、保存料を添加していないものでは注意が必要である。生ソーセージはゆでる、焼くなどの加熱を十分に行うことがたいせつである。生ソーセージは冷凍して保存できるが、加熱時には火通りをよくするために冷蔵庫で解凍してから加熱したほうがよい。大形のソーセージは切り口から菌に汚染されやすいので、一度切ったら毎日一枚でも切って、切断面を長く置かないようにすると安心である。
[河野友美・山口米子]ソーセージは、中国では、普通香腸
(シャンチャン)とよばれている。昔から臘月
(ラーユエ)(12月)になると正月のおせち料理としてつくられたので臘腸
(ラーチャン)の名もある。6世紀の『斉民
(せいみん)要術』にはすでに羊盤腸
(ヤンパンチャン)ツーフオ(羊大腸
(ひつじだいちょう)、黒
(くろあつもの))づくりの法、胡炮肉
(フーパオロウ)(蒸らし焼き、腸詰)の法、灌腸
(コワンチャン)(腸詰あぶり)の法という3種の腸詰が解説されている。いずれもヒツジの腸に肉と塩、サンショウ、ショウガ、コショウなどを詰めるのは共通するが、その後の調理法が異なり、現在の香腸にもっとも近いのは灌腸の法である。香腸は、肉あるいは内臓などをぶつ切りにし、中国独特の香辛料、調味料を混ぜ合わせて腸衣
(ちょうい)(ケーシング)に詰め、乾燥した肉加工品で、調味は地域の習慣や個人の嗜好
(しこう)などにより多少違っても、製造方法はだいたい同じである。
伝統的な家庭用の香腸は、豚肉の赤身1000グラム、白身300グラム、砂糖50グラム、食塩20グラム、高粱酒
(こうりゃんしゅ/カオリャンチウ)8グラム、五香粉
(ウーシャンフェン)1グラム、硝石0.1グラムなどを使う。また地方によって肉桂
(にっけい)の粉や白コショウの粉、しょうゆを加える場合もある。
[頼 學 禮]肉を1~2センチメートルの塊状に切り、砂糖、食塩、五香粉などの調味料を入れて、均等に混ぜ合わせたのち、3~5℃の温度で24時間冷蔵庫の中に置き、肉に味をしみ込ませる。翌日取り出して、さらに香り付けを兼ねて蒸留の高粱酒などを加えて、十分に攪拌
(かくはん)する。肉の詰め込みは、まず、腸衣の一端の口を糸で縛り、他端の口は漏斗
(ろうと)につなげ、味つけした肉を腸衣に装填
(そうてん)する。腸衣の中に酸素が残ると肉が酸化しやすいので、なるべく空気を入れないように注意して詰め込む。腸衣すべてに装填が完了したら、もう一端の口は同じように糸で緊縛する。それを長さ10センチメートルごとに紐
(ひも)で結節し、細い針で周りに小さい穴をあけて空気を抜く。日当りのよい所なら2~3日間、日陰の風通しのよい場所なら1週間ぐらい乾燥させて冷蔵庫で保存すれば1か月ぐらいは変質しない。腸衣は普通ウシやブタ、ヒツジなどの腸を使う。近年、肉類加工業の発達により、大規模生産する際は機械に多く依存し、添加物も多少異なる。一方、小規模製造の屋台や小売店の一部は、防腐剤などを使わない香腸を製造し、風味がよいのでなかなか人気がある。
生香腸は、食べる前に節ごとに切り離して、フライパンに油を入れ、5分間ぐらい肉に火がよく通るまで炒
(いた)める。薄く輪切りにした生のニンニクや長ネギといっしょにして、おかずや酒のつまみに利用される。
[頼 學 禮]『日本食肉加工協会他監修『ハム・ソーセージ関連三法規』(1993・食肉通信社) ▽古澤栄作著『新ハム・ソーセージ入門』新版(1998・日本食糧新聞社) ▽新村裕他著『新食肉加工Q&A ハム・ソーセージ製造』(2001・食肉通信社) ▽増田和彦著『ソーセージ物語――ハム・ソーセージをひろめた大木市蔵伝』(2002・ブレーン出版) ▽日本加工食品新聞編『ハム・ソーセージ年鑑』各年版(食品経済社)』