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コミュニケーション

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

コミュニケーション
communication
言語,身ぶり,画像などの物質的記号媒介手段とした精神的交流のこと。語源はラテン語で「分かち合う」を意味する communicare。歴史的には物質的記号は初期の身ぶり,叫びなどの直接的で無反省な状態から,明確な言語などの普遍的かつ間接的な状態へと発達した。コミュニケーションの過程は,精神的内容を物質的に表現する送り出しの段階,受け手によって受容される段階の2段階から成る。また,その内容は分析的に知的理解のためのものと,情緒的な伝播を目指すものとに分けられる。人間社会を成立させる基礎的な条件であり,特に今日ではマス・コミュニケーションが高度に発達して大きな影響力をもっている。

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コミュニケーション
communication
生物学用語としては,動物の同種個体間にみられる種々の信号のやりとりをさす。動作や色彩や光などの視覚的,鳴き声などの聴覚的,匂いなどの嗅覚的信号が用いられる。同種個体は一般にその信号に対して本能的に反応することが多い。また同一信号に対して雌雄間などで反応が異なることもある。

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デジタル大辞泉

コミュニケーション(communication)
社会生活を営む人間が互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと。言語・文字・身振りなどを媒介として行われる。「コミュニケーションをもつ」「コミュニケーションの欠如」
動物どうしの間で行われる、身振りや音声などによる情報伝達。
[補説]「コミュニケーション」は、情報伝達、連絡、通信の意だけではなく、意思の疎通、心の通い合いという意でも使われる。「親子の―を取る」は親が子に一方的に話すのではなく、親子が互いに理解し合うことであろうし、「夫婦の―がない」という場合は、会話が成り立たない、気持ちが通わない関係をいうのであろう。

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監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
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ナビゲート ビジネス基本用語集

コミュニケーション
意思の伝達を図ること。各人がもっている情報、意見感情などを、言葉や文字などを媒介として第三者に伝えることをいう。また、通信という意味もあり、情報を受け渡す行為や通信を行う機関をさすこともある。

出典:ナビゲート
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デジタル大辞泉プラス

コミュニケーション
日本のポピュラー音楽。歌は女性アイドルグループ、Perfume。2012年発売のシングル「Spring of Life」のカップリング曲。作詞・作曲:中田ヤスタカ。カンロの菓子「ピュレグミ」のCMに起用。

出典:小学館
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世界大百科事典 第2版

コミュニケーション【communication】
もともとは〈ある所(の生物や無生物)から別の所(の生物や無生物)へエネルギー,物体,生物,情報などが移動し,その移動を通じて移動の両端に,ある種の共通性,等質性が生じること〉をいう。ただし普通には〈人(送り手)から人(受け手)への情報の移動〉,もしくはその移動の結果生じた〈心のふれ合い〉〈共通理解〉〈共同関係〉などを指すことが多い。
【用語と範囲】
 communicationの語根はラテン語のcommunisで,〈共有の〉とか〈共通の〉〈一般の〉〈公共の〉というような意味をもつが,〈コミュニケーション〉にぴったり相当する日本語はなく,使われている文脈に応じて用語が選ばれる。

出典:株式会社平凡社
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大辞林 第三版

コミュニケーション【communication】
人間が互いに意思・感情・思考を伝達し合うこと。言語・文字その他視覚・聴覚に訴える身振り・表情・声などの手段によって行う。

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日本大百科全書(ニッポニカ)

コミュニケーション
こみゅにけーしょん
communication
人間にとって、コミュニケーションは基礎的社会過程である。個人の発達にとっても、集団や組織の形成と存続にとっても、コミュニケーションは必要不可欠であり、人間社会の基礎をなすものといってよい。アメリカの社会学者ランドバーグGeorge Andrew Lundberg(1895―1966)の表現を借りるならば、「社会と社会を構成する諸組織とがれんが造りの家屋であるとすれば、コミュニケーションはその建築を可能にし、全体を統一的に結び合わせるモルタル」である。[岡田直之]

概念と機能

アメリカの社会心理学者ハートレーEugene Leonard Hartley(1912―2002)によると、コミュニケーションは個人に対して次のような三つの機能を果たしている。(1)コミュニケーションは個人に対して世界をパターン化する。(2)コミュニケーションは他の人々との関係において、個人自身の位置を定義づける。(3)コミュニケーションは個人が首尾よく環境に適応するのを助長する。他方、社会や集団・組織にとって、コミュニケーションは、(1)社会統制の手段であり、(2)構成員の社会化と統合に不可欠な機制であり、(3)文化の創造、享受、継承を可能ならしめる。
 このように、人間と社会にとって基礎的重要性をもつにもかかわらず、コミュニケーションの概念はまことに多様であって、統一された共通の定義が存在するわけではない。ちなみに、社会学者、社会心理学者、コミュニケーション研究者などによる若干の定義を紹介してみるならば、コミュニケーションとは、「一方から他方へのメッセージの伝達」「情報を伝達して反応を引き出すこと」「情報、観念、あるいは態度を共有すること」「一連の規則によって行動の諸要素あるいは生活の諸様式を共有すること」「精神の相通じること、参加する人々の精神に共通のシンボルを生ぜしめること、要するに了解のこと」「人から人へと情報、観念、態度を伝達する行為のこと」「ある人ないし集団から他の人ないし集団(あるいは人々ないし諸集団)へ、主としてシンボルによって情報を伝達すること」「メッセージによる社会的相互作用のこと」といったぐあいに、実に多様な定義が提示されてきた。
 こうしたコミュニケーションの概念的多様性にもかかわらず、「人々がなにものか(情報、観念、態度、行動、感情、経験など)を共有すること」というコミュニケーションの基底的属性がおのずから浮かび上がってくる。もともとコミュニケーションということばはラテン語のコムニスcommunisから派生したものであり、「共通の」とか「共有の」といった意味を語源的にもっている。この心的共通性・共有性という基底的属性こそ、人間コミュニケーションの原点である。[岡田直之]

コミュニケーションのモデル

もっとも広く知られているコミュニケーション・モデルは、アメリカの応用数学者シャノンとウィーバーWarren Weaver(1894―1978)によって提示されたものである。このモデルは通信情報理論の基礎となった記念碑的業績といってよいが、電気通信で情報を迅速かつ正確に送るためには、どうすればよいかという通信工学的問題意識に基づいて構築されている。したがって、本来は機械系コミュニケーションにもっともよく適用されるが、人間を含めて生体系コミュニケーションのシステムにも広く応用できる点で、もっとも影響力のあったコミュニケーション・モデルといえる。
 このモデルはおよそコミュニケーションを考察する場合の、もっとも基礎的な諸要素をほとんど網羅している。情報源はまず伝えたいと望むメッセージを選択する。送信体はこのメッセージを信号に変え(符号化・記号化)、信号はコミュニケーション・チャンネルを通して受信体に送られる。受信体はその信号をふたたびメッセージに変換して(複号化・記号解読)、目標に送り込む。信号の伝達過程でメッセージの正確さや有効性を低減させる要素をノイズ(雑音)とよぶ。
 このように、このモデルには、「情報源/送信体」「目標/受信体」「メッセージ」「チャンネル」「ノイズ」「符号化・記号化」「複号化・記号解読」といったコミュニケーション過程にかかわる基本的要素ないし要因がほとんど含まれている。[岡田直之]

人間のコミュニケーションの特徴

シャノン‐ウィーバー・モデルの特徴は、なによりも、情報源から送り先への直線的・一方向的なコミュニケーション過程を前提にしていることであるが、いうまでもなく、人間のコミュニケーションは意味の伝達と共有を図る双方向的・循環的・創発的な記号・象徴行為である。「フィードバック」feedbackの概念を導入しなければ、人間のコミュニケーションの動態を理解することはできない。話し手が聞き手の表情や返答などの反応に配慮しながら会話を進める場合、彼はフィードバック機能を行っている。聞き手の反応が好意的であれば、話し手はおそらく会話をより活発に続けようとするだろうし、逆に聞き手が無関心であったり、不機嫌であれば、話し手はたぶん会話を打ち切るであろう。前者は正のフィードバックの働きであり、後者は負のフィードバックの働きである。
 フィードバックがコミュニケーション行動の事後的調整であるのに対して、「フィードフォワード」feedforwardは、予想や予期に基づくコミュニケーション行動の事前の調節機能である。話し手が会話のある時点で、聞き手にある種の反応を期待し、予想された反応が生じなかったならば、別のコミュニケーション行動がとれるようにあらかじめ準備しておく場合、こうした期待や予想のメカニズムがフィードフォワードとよばれる。フィードフォワードが作動することによって、フィードバックはより柔軟かつ円滑に機能でき、人間のコミュニケーションは質的により豊かになる。
 人間のコミュニケーションの場合、情報源と送信体、受信体と目標とはそれぞれ別個のコミュニケーション単位としてよりも、一組のコミュニケーション構成単位としてとらえ、情報源=送信体(送り手)におけるメッセージの記号化と、目標=受信体(受け手)におけるメッセージの解読・解釈との連結ユニットを想定したほうが理解しやすい。しかも、人間のコミュニケーションにおける相互性と循環性を考えるならば、個人は送り手であるとともに受け手であり、受け手であるとともに送り手でもあるのだから、人間のコミュニケーションの場合、いわゆる送り手、受け手にかかわりなく、メッセージの記号化、解読、解釈は重層的に進行すると考えるべきであろう。
 人間のコミュニケーションはつねに社会的、文化的脈絡で生起する。そもそも人間のコミュニケーションは、主として言語による象徴的コミュニケーションであるが、言語が相互に了解可能な意味をもつ記号のシステムである限り、コミュニケーションは優れて文化的に規定された事象にならざるをえない。異文化間のコミュニケーションがいかに困難で、やっかいな問題を抱えているかを考えれば、コミュニケーション事象における文化的要因の決定的重要性は容易に理解できよう。しかし、同一文化圏の内部においてすら、階層・階級やエスニック・グループ(人種集団)やジェンダーなどの差によって、記号やメッセージの意味内容が微妙にずれて、いわゆる意味論的ノイズの問題が発生する。
 さらに、人間社会のコミュニケーション・システムは経済や政治とも深く絡み合っている。経済システムと政治システムの態様が、その社会におけるコミュニケーションの様式と機能を規定し、多大の影響を及ぼしている。人間のコミュニケーションは、けっして社会的・文化的真空のなかで生起するわけではないのである。
 1980年代以降のコミュニケーションの定義で注目されるのは、(1)コミュニケーションを共有の普遍的な言語ゲームに基づいて社会的結合・統合・合意を図る行為・過程であるとみなすだけではなく、コミュニケーションの惹起する葛藤(かっとう)・差異・離反・排除・抑圧の位相にも目を向ける複眼的な視座の台頭と、(2)コミュニケーションとメディアとを表裏一体の関係としてとらえるメディア論的パラダイムへのシフト、であろう。[岡田直之]

動物のコミュニケーション

ある動物が音やにおいなどの信号によって情報を送り、別の個体が感覚器を通じてその情報の内容を読み取ると、コミュニケーションが成立したことになる。コミュニケーションの方法は、動物によってさまざまであり、信号を受ける感覚器の違いにより次の4種に大別できる。
(1)聴覚刺激による伝達 昆虫やカエルの音声、鳥の歌、人の声、ゴリラのドラミングなどである。昆虫やカエルでは、鳴き声が種の認知をしたり、雌を引き付けるのに役だっているといわれる。
(2)視覚刺激による伝達 色、形、動きなどが信号として伝わる。体表面、羽毛の色や模様を目だたせることにより、同種であることを認知したり、発情などの生理的状態を伝えると考えられる。威嚇や防衛を表す決まりきった行動の型、求愛時などのディスプレー、人やサルでみられる複雑な顔の表情なども視覚刺激であり、これらの行動は表現行動ともよばれる。
(3)嗅覚(きゅうかく)刺激による伝達 動物が体外に化学物質を放出することで情報が伝わるが、情報を受け取るのが同種である場合に、その化学物質をフェロモンとよんでいる。カイコガでは、雌がフェロモンを分泌して雄を誘引する。哺乳(ほにゅう)類では、排出物を残したり、皮脂腺(ひしせん)からの分泌物をこすりつける行動(マーキング行動marking behavior)をして、縄張りを誇示したり個体あるいはグループを認知させる。
(4)触覚刺激による伝達 鳥の羽づくろい、哺乳類の抱くという行動や毛づくろいなどがある。ニホンザルでは、ほかの個体との毛づくろいが、群れ内の社会関係の維持に重要な役割を果たしているとされる。
 これら4種の伝達方法のうち、ある情報を伝達するために一つしか用いないこともあれば、複数の方法が組み合わされることもある。もっとも単純な例としては、トゲウオやコマドリで雄の腹の赤い色が、ほかの雄に攻撃行動を解発させることがあげられる。これに対して、ニホンザルの雌では、発情すると顔や尻(しり)が鮮やかに赤くなり、雄の後を追い「恋鳴き」とよばれる音声を出すが、においによっても雄を引き付けるといわれる。しかし、一般には単純な方法しか用いなくても、相手の反応過程との組合せによって複雑な内容が伝わることが多い。
 動物がある情報を伝えるのに、どの伝達方法を用いるのかは、それぞれの動物の生活のあり方と、伝える相手との距離に大いに関係がある。たとえば、夜行性のガの雌はフェロモンを使って雄を誘引するが、昼行性のチョウでははねの模様が重要である。縄張りをもつ鳥や哺乳類では、遠くの個体に対する縄張り宣言は音声によるが、縄張り内の情報伝達では4種の方法のすべてが用いられる。
 情報の受け手は同種であることが多いが、共生や被食・捕食関係にある2種間や、擬態をする種とだまされる種との間の情報伝達では、他種が受け手である。また、同種に向けた信号が本来の受け手ではない捕食者等の他種によって受け取られ利用される場合もある。
 信号はさまざまな情報を伝達する。鳥のさえずりの多くは、その区域を縄張りとして所有していることの宣言になっており、しかも周囲の個体は、さえずりを聞くだけでそれを歌っているのが誰であるかを判断できる。闘争において使われる信号には、闘争能力に関する情報が含まれており、これによって勝ち目のない闘争を避けることができる。また、配偶相手としてふさわしい相手を選ぶために、求愛者の出す信号が手がかりとして用いられることもある。さらに、動物の信号のなかには外的事象をシンボリックに指し示す例(参照的信号機能)も知られている。サバンナに住むベルベットモンキーは3種類の捕食者に対して異なる警戒音を発するが、群れの仲間はその違いを聞き分けて、その敵に応じた適切な逃避行動をとる。またクモザルは命名体系をもち、群れの他個体に呼びかけるときには、その個体に応じた鳴き声を用いる。[井上美智子・川道武男・藪田慎司]

動物のコミュニケーションの進化

1970年代後半以降、動物のコミュニケーションの進化についての理解が著しく深まった。進化的観点からみれば、コミュニケーションにおいて重要なのは、情報を伝達することというよりも、むしろ信号の受け手の行動を変えることである。その変化が送り手に有利なものであれば、その信号は自然選択によって進化するだろう。だとすると、動物がコミュニケーションで用いる信号は正直なものなのか、という疑問が生まれる。たとえば、闘争において自分の力を誇示している個体や、求愛において自分の魅力をふりまいている個体は、本来以上の力があるように見せかけないのだろうか。なぜなら、どちらの場合でもそうすることで利益が得られる(ライバルを追い払えたり、雌を獲得できたりする)からである。しかし、逆に信号の受け手の立場から考えれば、正直でない信号にだまされることは不利益である。受け手は正直でない信号を見抜くかもしれないし、信号自体を無視するかもしれない。このような受け手による信号のえり好みが行われる結果、いくつかのタイプの正直な信号が進化することがわかっている。
 正直な信号の例の一つは、信号とそれが伝えている情報の内容との間に直接的で必然的な結び付きがある場合である。たとえば、威嚇に使われる音声の周波数は、しばしば体の大きさの正直な信号になっている。これは、体が大きい方がより低い声を出すことができるという物理的理由による。信号と情報に直接的で必然的な結び付きがない場合には、送り手は正直でない信号を出すことができる。しかしその場合であっても、動物が互いに個体識別しているなら、やはり正直な信号が進化すると考えられる。嘘(うそ)の信号を出す個体は次からは信用されなくなるため、不利益を被るかもしれないからである。このため正直でない個体の適応度が下がり、結果として正直な信号を出す個体が自然選択によって選ばれていくだろう。
 正直な信号が進化する別のケースもある。それは、信号が送り手のある種の「優良さ」を示し、かつ、実際よりも「優良」であるように見せかけることにコストがかかる場合である。この場合、自分の「分を超える」信号を出そうとしても、結局、分不相応なコストに耐えることができない。より「優良」な信号を出すことができるのは、その信号を出すのに見合うコストを支払える個体、つまり本当に優良な個体だけである。この結果、正直な信号が進化するだろう。たとえば、ツバメの雄は長い尾羽をもっている。それは、雌にとっては魅力的であるが逆に雄の生存にとっては不利である。しかし、この長い尾羽は、まさにそれが生存に不利だからこそ進化してきたということになる。雌からみれば、長い尾羽をもつ雄は、その不利にもかかわらず生存しているのであり、それは不利を打ち消すだけの「優良さ」をもっていることを示す正直な信号になる。実際、実験的に長い尾羽をもたせた雄はその長い尾羽のコストに耐えられず生存率が低下する。この「優良さ」が具体的に何であるかについては、餌(えさ)を捕まえる能力等のほかに、寄生虫等の感染に対する抵抗力や免疫力等の可能性が注目されている。同様の正直な信号が、捕食者から逃避する動物の行動にも存在する。ガゼルは、捕食者に狙われた時に一目散に逃げるのではなく、ピョンピョンと跳躍してみせる。これは、捕食者に自分の逃走能力の高さを示している信号だと考えられる。逃げる能力が本当に高いガゼルでなければ、高く激しく飛ぶことはできないし、そんな無駄なことをして余裕をみせたりできないからである。
 信号の進化の初期に目を向けると、最初に信号として何が選ばれるのかが問題である。音なのか、匂いなのか、視覚刺激なのか。さらに、たとえば視覚刺激が選ばれたとして、それは、どんな形なのか、動きなのか、色なのか。事実上、信号デザインの可能性は無限である。そのなかで、一つの可能性が選ばれて進化してくるわけだが、そのメカニズムには、信号は受け手に認知されなくてはならないという単純な制約が関係している。受け手となる動物は、すでに彼らの生活の必要性から、さまざまな認知システムを発達させてきている。信号の送り手が受け手の行動に影響を与えようとするなら、すでに存在する受け手の認知システムを利用するのがよい方法のはずだ。たとえば、ミズダニのあるグループでは、雄の雌に対する求愛信号が、前脚を雌の前で振動させる行動からなりたっている。この求愛信号に対する感受性は、そのような求愛信号をもたない近縁種の雌にもみられる。これは、信号への感受性が信号よりも先に進化していたことを意味する。実際、求愛行動の振動は餌の振動を模したものになっているらしい。ミズダニの求愛信号は、雌のもつ餌への感受性に便乗して進化したと考えられる。多くの信号進化の初期には、このようなメカニズムが働いていたと考えられる。
 人間のコミュニケーション能力を進化的観点から理解する試みも進められている。人間という動物のコミュニケーションを特徴づけるのは言語であるが、人間の言語コミュニケーション能力は、単一の能力というよりも複数の認知能力の複合であると考えられる。たとえば、意図的な音声表出能力、参照的な音声信号、非言語的な概念表象を構成する能力、他者に「心」を帰属させることでその行動を予測する能力(心の理論)、文法にのっとった文をつくり出す能力等が関係していると考えられる。これらに類似した諸能力が他の動物にもみられる。これらの能力が他の動物でどのように進化してきたのか、またそれらが人間の言語コミュニケーション能力の進化とどのように関係しているのか(相同なのか相似なのか)を知ることが重要であると考えられる。[藪田慎司]
『●コミュニケーション一般 ▽C・I・ホヴランドほか著、辻正三・今井省吾訳『コミュニケーションと説得』(1960・誠信書房) ▽C・チェリー著、都丸喜成・木納崇訳『ヒューマン・コミュニケーション』(1961・光琳書院) ▽山田宗睦編『現代社会学講座4 コミュニケーションの社会学』(1963・有斐閣) ▽ウィルバー・シュラム編、波多野完治監修、テレ・コミュニケーション研究会訳『コミュニケーションの心理学』(1964・誠信書房) ▽江藤文夫著『見る――現代のコミュニケーション』(1965・三一書房) ▽吉田民人・加藤秀俊・竹内郁郎著『今日の社会心理学4 社会的コミュニケーション』(1967・培風館) ▽C・E・シャノン、W・ウィーヴァー著、長谷川淳・井上光洋訳『コミュニケーションの数学的理論――情報理論の基礎』(1969・明治図書) ▽R・ウィリアムズ著、立原宏要訳『コミュニケーション』(1969・合同出版) ▽田中靖政著『コミュニケーションの科学』(1969・日本評論社) ▽飽戸弘著『コミュニケーション――説得と対話の科学』(1972・筑摩書房) ▽山田宗睦著『コミュニケーションの文明』(1972・田畑書店) ▽D・K・バーロ著、布留武郎・阿久津喜弘訳『コミュニケーション・プロセス――社会行動の基礎理論』(1972・協同出版) ▽慶應義塾大学新聞研究所編『コミュニケーション行動の理論――インターディシプリナリー・アプローチ』(1972・慶応通信) ▽江藤文夫ほか編『講座・コミュニケーション』全6巻(1972~1973・研究社) ▽内川芳美ほか編『講座 現代の社会とコミュニケーション』全5巻(1973~1974・東京大学出版会) ▽東京大学新聞研究所編『コミュニケーション――行動と様式』(1974・東京大学新聞研究所) ▽稲葉三千男著『現代コミュニケーションの理論』(1975・青木書店) ▽O・ラービンジャー著、小川浩一・伊藤陽一訳『コミュニケーションの本質』(1975・新泉社) ▽佐藤毅著『現代コミュニケーション論』(1976・青木書店) ▽南博・社会心理研究所著『くちコミュニケーション』(1976・誠信書房) ▽滝沢正樹著『コミュニケーションの社会理論』(1976・新評論) ▽阿久津喜弘編・解説「コミュニケーション――情報・システム・過程」(『現代のエスプリ』110号・1976・至文堂) ▽D・マクウェール著、山中正剛監訳『コミュニケーションの社会学――その理論と今日的状況』(1979・川島書店) ▽生田正輝著『コミュニケーション論』(1982・慶応通信) ▽水原泰介・辻村明編『コミュニケーションの社会心理学』(1984・東京大学出版会) ▽M・セール著、豊田彰・青木研訳『コミュニケーション――ヘルメス1』(1985・法政大学出版局) ▽J・ハーバーマス著、河上倫逸・藤沢賢一郎・丸山高司ほか訳『コミュニケイション的行為の理論』上中下(1985、1986、1987・未来社) ▽コミュニケーション研究班編『社会的コミュニケーションの研究』1~3(1985~1987・関西大学経済・政治研究所) ▽加藤春恵子著『広場のコミュニケーションへ』(1986・勁草書房) ▽青池慎一ほか著『日常生活とコミュニケーション』(1986・慶応通信) ▽D・マクウェール、S・ウィンダール著、山中正剛・黒田勇訳『コミュニケーション・モデルズ』(1986・松籟社) ▽竹内成明著『コミュニケーション物語』(1986・人文書院) ▽妹尾剛光著『コミュニケーションの主体の思想構造――ホッブズ・ロック・スミス』(1986・北樹出版) ▽鍋倉健悦著『人間行動としてのコミュニケーション』(1987・思索社) ▽電気通信政策総合研究所著『新しいコミュニケーション理論の研究』(1987・電気通信政策総合研究所) ▽林進編『コミュニケーション論』(1988・有斐閣) ▽田野崎昭夫ほか編『現代社会とコミュニケーションの理論』(1988・勁草書房) ▽鶴見俊輔・粉川哲夫編『コミュニケーション事典』(1988・平凡社) ▽橋元良明著『背理のコミュニケーション――アイロニー・メタファー・インプリケーチャー』(1989・勁草書房) ▽嵯峨山雄也著『ボディ・コミュニケーション――動作でつくるよい人間関係』(1989・勁草出版サービスセンター) ▽有吉広介編『コミュニケーションと社会』(1990・芦書房) ▽原岡一馬編『人間とコミュニケーション』(1990・ナカニシヤ出版) ▽東京大学新聞研究所編『高度情報社会のコミュニケーション――構造と行動』(1990・東京大学出版会) ▽辻村明、D・L・キンケード編、中島純一訳『コミュニケーション理論の東西比較――異文化理解のパラダイム』(1990・日本評論社) ▽J・B・ベンジャミン著、西川一廉訳『コミュニケーション――話すことと聞くことを中心に』(1990・二瓶社) ▽中島梓著『コミュニケーション不全症候群』(1991・筑摩書房) ▽稲葉三千男著『コミュニケーションの総合理論』(1992・創風社) ▽E・M・ロジャーズ著、安田寿明訳『コミュニケーションの科学――マルチメディア社会の基礎理論』(1992・共立出版) ▽飽戸弘著『コミュニケーションの社会心理学』(1992・筑摩書房) ▽宮原哲著『入門コミュニケーション論』(1992・松柏社) ▽R・R・ラッシュ、D・アレン著、村松泰子編訳『新しいコミュニケーションとの出会い――ジェンダーギャップの橋渡し』(1992・垣内出版) ▽飯塚久夫ほか編『コミュニケーションの構造――人間・社会・技術階層による分析』(1993・NTT出版) ▽橋本満弘・石井敏編『コミュニケーション基本図書1 コミュニケーション論入門』『コミュニケーション基本図書2 日本人のコミュニケーション』(1993・桐原書店) ▽郵政国際協会電気通信政策総合研究所編・刊『情報社会におけるコミュニケーション構造の変容』(1993) ▽大田信男ほか著『コミュニケーション学入門』(1994・大修館書店) ▽高橋純平・藤田綾子編『コミュニケーションとこれからの社会』(1994・ナカニシヤ出版) ▽正村俊之著『秘密と恥――日本社会のコミュニケーション構造』(1995・勁草書房) ▽伊藤守・小林直毅著『情報社会とコミュニケーション』(1995・福村出版) ▽尾関周二ほか編『思想としてのコミュニケーション』(1995・大月書店) ▽田中伯知著『コミュニケーションと情報』(1996・芦書房) ▽船津衛著『コミュニケーション・入門――心の中からインターネットまで』(1996・有斐閣アルマ) ▽橋元良明編著『コミュニケーション学への招待』(1997・大修館書店) ▽佐藤勉編『コミュニケーションと社会システム――パーソンズ・ハーバーマス・ルーマン』(1997・恒星社厚生閣) ▽大谷裕著『コミュニケーション研究――社会の中のメディア』(1998・慶應義塾大学出版会) ▽竹内郁郎ほか編著『メディア・コミュニケーション論』(1998・北樹出版) ▽池村六郎著『コミュニケーション――メッセージの解読とメディアの経験』(1998・阿吽社) ▽中森強編著『新現代図書館学講座15 コミュニケーション論』(1998・東京書籍) ▽田村紀雄著『コミュニケーション――理論・教育・社会計画』(1999・柏書房) ▽後藤将之著『コミュニケーション論――愛と不信をめぐるいくつかの考察』(1999・中央公論新社) ▽伊藤陽一他著『入門セミナー・現代コミュニケーション1 コミュニケーションのしくみと作用』 ▽関口一郎他著『入門セミナー・現代コミュニケーション2 現代日本のコミュニケーション環境』(1999・大修館書店) ▽橋元良明・船津衛編『シリーズ情報環境と社会心理3 子ども・青少年とコミュニケーション』(1999・北樹出版) ▽池田謙一著『社会科学の理論とモデル5 コミュニケーション』(2000・東京大学出版会) ▽阿部潔著『日常のなかのコミュニケーション――現代を生きる「わたし」のゆくえ』(2000・北樹出版) ▽正村俊之著『コミュニケーション・メディア――分離と結合の力学』(2001・世界思想社) ▽宮崎公立大学コミュニケーション学会編『コミュニケーション用語事典』(2001・北樹社)』
『●動物のコミュニケーション ▽A・J・プリマック著、中野尚彦訳『チンパンジー読み書きを習う』(1978・思索社) ▽鈴木健二著『フェロモン』(1980・三共出版) ▽C・K・キャッチポール著、浦本昌紀・大庭照代訳『鳥のボーカルコミュニケーション』(1981・朝倉書店) ▽T・R・ハリデイ、P・J・B・スレイター編、浅野俊夫・長谷川芳典・藤田和夫訳『動物コミュニケーション』(1988・西村書店) ▽J・R・クレブス、N・B・デイビス著、山岸哲・巌佐庸訳『行動生態学(原書第2版)』(1991・蒼樹書房) ▽Marc D. HauserThe Evolution of Communication(1996, MIT Press, Cambridge MA) ▽A. Manning & M. S. Dawkins ed.An Introduction to Animal Behaviour, Fifth ed.(1998, Cambridge University Press, Cambridge)』

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図書館情報学用語辞典

コミュニケーション
広義には,情報やアイデア,態度,感情などの個人(もしくは集団)間での伝達.人々の相互作用の成立に不可欠であり,あらゆる活動においてなされる.狭義には,人間の諸活動の中でも特に情報伝達を主たる目的とする活動.制度化された活動においては,メッセージの内容や経路があらかじめ定められ,コミュニケーションをいかに組織的に行い効率のよい活動を達成するかが問題とされる.

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精選版 日本国語大辞典

コミュニケーション
〘名〙 (communication) 特定の刺激によって互いにある意味内容を交換すること。人間社会においては、言語、文字、身ぶりなど、種々のシンボルをなかだちとして複雑かつ頻繁な意味内容の伝達、交換が行なわれ、これによって共同生活が成り立っている。〔外来語辞典(1914)〕
※日本の思想(1961)〈丸山真男〉三「法律学、政治学、経済学というような本来密接な関連をもつ学問分野の間でさえコミュニケーションがあまりないという状態です」

出典:精選版 日本国語大辞典
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コミュニケーション
コミュニケーション
communication
伝達・通信・交信など,情報が伝えられることをコミュニケーションという。そのうち対人コミュニケーションとは,人と人とをなんらかの心的メッセージを送受して結ぶことである。心理学が対象とするコミュニケーションは,この対人コミュニケーションに尽きるといって良く,互いの意図や感情の伝達が言語を介して行なわれるものを言語コミュニケーション,言語以外の手がかりを用いて行なわれるものを非言語コミュニケーションとよぶ。

【言語コミュニケーションverbal communication(VC)】思考を支える言語(内言inner speech)とコミュニケーションを支える言語(外言external speech)の区別およびその起源については,古くから議論がなされてきた。ワトソンWatson,J.B.は外言の声が小さくなってささやきとなり,それが内化されて内言となるとした。ピアジェPiaget,J.は自己中心性の現われである内言が,やがて社会的言語(外言)に取って代わられるとした。これらの説に対し,ビゴツキーVigotsky,L.S.は,外に向けて発せられ,社会適応を可能にする外言と,個人内に向けて発せられ,思考や行動調整を可能にする内言は機能的にも構造的にも異なるとし,両者を区別した。ただし,ビゴツキーによれば,外的な活動を伴う前言語的な思考(自己中心語や,指を使って数えるなど)は内化されて内言となるが,完成した後の内言と外言との区別は明瞭ではない。思考におけるモニタリングやコントロールは,個人の内部で行なわれるコミュニケーションととらえることもでき,また,たとえば講演の準備などは,外に向けて発せられる言語活動であっても思考のプロセスと重なる。質問に答えながら話したり,話を聞きながら質問を考えることが難しいように,内言と外言は共通のリソース(認知的処理資源cognitive resource)を用いていると考えられる。

 外言によって担われるコミュニケーションには,講演やプレゼンテーションのように,話者から他者に向けて一方的に行なわれるものもあるが,より典型的であるのは,特定の二者ないし複数の人が互いに番(ターンturnともいう)を取りながら行なう会話である。会話は機器を用いない限り,音声が伝わる範囲内で行なわれる。そのため話者は「今,ここ」の同じ文脈,環境を共有し,その中で発話を理解し産出する。このような会話は,発話utteranceの字義的な意味literal meaningの理解や産出だけに還元できないことが,哲学者・言語学者によって指摘されてきた。

 哲学者・言語学者であるオースティンAustin,J.L.は,言語行為speech actという概念を提唱した。言語行為とは,要求,約束,脅しのように,発話が言明や陳述以上の,いわば行為として機能しうることを指す。オースティンは,発話を行なうことそのものを発話行為locutionary act,話し手が発話によって聞き手に伝えようとする意図(依頼,約束,脅しなど)を発話内の力あるいは発話内行為illocutionary act,その発話が聞き手の感情や行動に及ぼす影響を発話媒介行為perlocutionary actとした。たとえば「報告書を出してください」という発話行為は,要求という発話内の力をもち(発話内行為),相手の行為を制約する(聞き手は報告書を出す義務を負う)という発話媒介行為を生じさせる。さらに哲学者・言語学者であるサールSearle,J.R.は,言語行為が成立するのに必要な条件を,命題内容と意図という側面から,適切性条件felicity conditionsとしてまとめた。適切性条件は,⑴準備条件preparatory condition:発話者および聞き手,場面,状況設定に関する条件(「聞き手は報告書を出すことができる」など),⑵誠実条件sincerity condition:発話者の意図に関する条件(話し手は,聞き手が報告書を出すことを欲している),⑶命題内容条件propositional content condition:発話の命題内容が満たすべき条件(「聞き手は報告書を出す」),⑷本質条件essential condition:発話によって生じる行為の遂行義務に関する条件(聞き手は報告書を出す義務を負う)から成る。サールは,これらの条件は話者間で共有されており,条件に言及することで,直接的に言及せずとも,間接的な発話行為を行なうことができるとした。たとえば「あなたは報告書を出しますね」は,将来の活動(命題内容)に言及することで,「報告書を出してください」という直接的な要求を間接的に行なっていることになる。同様に,「報告書,出せますか」(準備条件),「報告書を出してほしい」(誠実条件),「あなたは報告書を出さなければならない」(本質条件)などの,間接的要求表現が可能である。要求は,相手に負荷をかけることになる。間接性をもたせることで,直接的な負荷をかけず,また断わることのできる余地を与えることができる(たとえば,「出しません」ではなく「出せません」など)。

 言語行為も,適切性条件も,発話の字義的な意味以上の推論を要請する。哲学者・言語学者グライスGrice,H.P.は,会話において発せられる発話には字義どおりの意味と推測によって導かれる意味,すなわち会話における含意conversational implicatureがあるとした。グライスは,会話を行なう話者は暗黙のうちに特定の約束事を守り,これに基づいてコミュニケーションを行なっていると考え,これを協調の原理cooperative principleとした。この原理には四つのカテゴリー,すなわち⑴量quantity(必要な情報はすべて提供する。必要以上の情報の提供は避ける),⑵質quality(偽と考えられることや十分な根拠を欠くことは言わない。つまり真実を述べること),⑶関係relation(無関係なことは言わない),⑷様態manner(わかりにくい表現や曖昧な表現は避ける。簡潔に,順序よく表現する)があるとし,これらを公準maximとよんでいる。公準が守られている限り,話者は字義どおりの意味解釈を行なうが,公準に背く発話は,字義どおりではない意味(含意)があると推論される。たとえば,「報告書はいつできますか」という話者の質問に対し,聞き手が「来週」と答えたにもかかわらず,話者が再度同じ質問をしたとすれば(量の公準に違反),聞き手は「もっと早く」という要求をしていると推測するかもしれない。粗末な報告書に対し「上出来だ」と言われれば(質の公準に違反),これは皮肉と解釈される。「報告書ができました」と持っていったにもかかわらず,「明日の天気はどうか」と尋ねられれば(関係の公準に違反),今はこの話をするのは不適切だ,という含意が作られるかもしれない。話者がテクニカルなジャーゴンjargonばかりを用いて報告書の内容を説明していれば(様態の公準に違反),聞き手は,相手は報告書の内容を理解してほしくないのだ,と推測するかもしれない。

【会話の文化差】 会話conversationにおいて共有されている文脈,知識,約束事は,発話の理解や産出に影響を及ぼすが,話されるトピック,話者同士の関係性(親密度,地位の上下,役割など),話者の特性(ジェンダー,年齢など),加えて特定の地域,時代背景のもとで共有されている行動様式や情報処理様式(これを文化と言い換えることもできる)も発話の理解や産出に影響を及ぼす。ここでは,文化の側面について述べる。

 一般に,東洋と西洋の文化的な違いとして,⑴集団主義collectivismか個人主義individualismか,⑵自律性重視autonomyか関係性重視relatednessか,などが問題にされる。また,これらの文化差を反映するコミュニケーションの特徴として,⑴文脈依存的(高コンテクストhigh context)か文脈独立的(低コンテクストlow context)か,⑵ことばによって伝えられる関係性を重視するか意味内容を重視するか,⑶包括的な処理holistic processがなされるか分析的な処理analytic processがなされるか,などの検討が行なわれている。

 こういった文化差はさまざまな方法,たとえば⑴実際の会話を記録し分析する,⑵他者による会話を参加者に提示し,会話の特性について評定を求める,⑶特定のシナリオ・状況説明のもとで,話者がどのような表現を取るかを書かせる,話させる,⑷発話・文章によって伝えられる意見を発話者・書き手の特性に帰属させる度合い(対応バイアスcorrespondence bias)を検討する,⑸語の意味内容と語調の干渉課題(ポジティブあるいはネガティブな語調で,ポジティブあるいはネガティブな語を示し,意味内容の判断に語調が影響を及ぼすか,また語調に関する判断に意味内容が影響を及ぼすか)を調べる,などの方法により検討されている。石井敬子と北山忍はこういった研究をレビューし,東洋では西洋に比べ発話の解釈や産出が文脈依存的であること(文脈,および声の大きさや高さ,調子などの非言語情報の影響を受けやすい),関係性が重視されること(上下関係や親密性が発話に反映される度合いが,東洋において大きい),表現の産出に要する反応時間が長い(反応時間は,文脈や背景情報に合わせてことばを選ばなければならないという,認知処理への負荷を反映していると解釈される)などを示している。

 過去の出来事に関する親子の会話や,自伝的記憶autobiographical memoryの報告を求める調査においても,西洋では発話量が多く,個別の記憶が具体的かつ詳細に語られるのに対し,東洋では発話量が少なく,抽象的で詳細情報が少ないことが示されている。また,日本語の会話では,聞き手が相手の発話の最中に,頻繁にあいづちを打つ。あいづちaizuchiは承認acknowledgementや裏ルートのフィードバックback-channel(英語のuh-huhなど)とは異なり,意味の切れ目以外の場所でも生じる,いわば合いの手である。以心伝心という日本的コミュニケーションは,こういった文脈依存,関係性重視の情報処理パターンの特徴を反映しているものと考えられる。【会話行動の性差】 男女の会話のことばづかいには非対称性がある。女性は敬語やていねい語,感嘆詞や倒置表現,あいづちが多く(井出祥子,1979,1982),付加疑問文や間接的要求表現も多い(Lakoff,G.,1975)。これは女性が会話場面で脇役に回り,断定的な表現を避ける傾向を示唆していると考えられてきた。地図を説明するときには男性が説明役,女性が聞き役のペアが最も情報伝達の効率が良く,男性の方が長く話すのである(大坊郁夫,1982)。地図の読み取り能力に見られる性差が会話行動に反映されたのかもしれないが,男女が対等に会話に参加しているのではないことがうかがわれる。

 会話進行中に,会話の順番取りのルールturn-taking rule(Sacks,H.,Scheglof,E.A.,& Jefferson,G.,1974)が働き,発話の番の交替が起こる。このルールは割り込みinteruptionや沈黙silenceによって破られる場合がある。男性にルール違反が多い。男性は,割り込みや沈黙などのルール違反により,発話する権利,すなわち「発話権」を奪おうとする。その一方で,女性はあいづちが多く,聞き役に回ることが多い(Zimmerman,D.H., & West,C.,1975,1977; Fishman,P.M.,1978;江原由美子・山崎敬一・好井裕明,1984; 江原,1986)。江原(1986)は,男性は「質問-応答連鎖」の技能を駆使して自己の発話権を誘導し,女性の発言に関心がなければ意識的に沈黙してしまい,話し手を気まずい雰囲気にさせてしまう,あるいは男性は女性の発話中に割り込みによって発話権を奪ってしまうことも多いと指摘した。男女が平等に会話に参加していると思っていても,女性の意見が意思決定に反映されにくい構造になっているのではないか。すなわち,会話は「性差別を再生産する装置reproduction device of gender discrimination」となっていると指摘している。しかし,会話行動には文化差があり,日米の会話行動のパターンには違いが見られる。内田伸子(1984,1999)によると,アメリカ人は自己主張完結型self-assertion patternの会話行動のため,発話中に聞き手がうなずくと自分の発話権を侵害されたと不快になるという。一方,日本人は相手配慮関係調整型listener-consideration patternであり,聞き手のうなずき方によって発話内容を調整する。聞き手がうなずいてくれないと,かえって不安になる。アメリカ人は自分の意見を最後まで話しきるまで話しつづけるが,日本人は相手との良い人間関係を作り上げることに主眼があるため,話し手は発話中に聞き手に注意を払い,同意やあいづちを求めることが多い(Clansy,P.,1982)。アメリカ人にとっては割り込みは発話権を奪う行為であり,会話ルール違反として嫌われるが,ハワイの原住民(Au,C.,1985)やブッシュマンのグイ族(菅原和孝,1988)では,話し手の発話の途中で口を差しはさむ行為は共同的同時発話cooperative simultaneous utteranceとみなされ,能動的に会話に参加していることの証として奨励されているのである。このように,対人関係を構築する手段としての会話行動には文化による違いがあり,いわば「文化の衣」(箕浦康子,1984)を身にまとっているといえよう。

 会話行動の背後に潜む会話ルールの価値づけの違いが,会話のリズムの差をもたらしている(内田,1999)。さらに,会話行動のリズムを制約する要因としては,会話者同士の社会的地位,対人関係の親疎,年齢,話題,性役割意識,会話状況(軽いおしゃべりか交渉場面か)などさまざまある。これらの要因を統制してみると,会話の番の交替がスムーズか否かは,社会的地位,性役割意識,話題,会話状況などによって左右されていることが明らかになった(内田,1993など)。会話者同士が,互いに相手の呼吸に合わせ,相手の発話をよく聞くことにより,人と人との関係の土台が築かれる。会話行動に性差が見られるからといって,直ちに会話が「性差別を再生産する装置」になるわけではない。会話者同士が相手の会話のリズムに合わせようとする意識的努力によって,社会的対人関係にふさわしい言語表現が選択される。相手のことばによく耳を傾け,タイミング良く応ずる。無駄のないことば,相手の発話に関係づける発話で応じることで,会話はリズミカルになる。それに伴い,「通じ合っている」という実感がわくのである。

 日本的会話のこつは,まず相手の発話をよく聞くことが不可欠である。⑴話すスピードは相手に合わせ,⑵うなずきやあいづちはバランスやタイミングを考えて差しはさみ,⑶相手のキーワードを繰り返し,⑷質問は興味や関心をもっていることの意志表示なので時々質問もする。こうしてリズミカルな会話が進行するに伴い,相手の知と自分の知をすり合わせ,会話する前には存在しなかった新たな知を創発する環境が準備されていく。会話は「性差別を再生産する装置」ではなく,「相手と通い合い,響き合う装置device of mutual interaction」であり,「知の創成の装置device of creation of knowledge」として進化することが期待される装置なのである。【非言語コミュニケーションnonverbal communication(NVC)】 ことば以外の手がかり(身振り,姿勢,表情,視線,声の音響特徴など)を用いて行なわれる。乳児にとって,ことばによるやりとりが可能となるのは1歳前後のことであるが,それ以前の段階から,乳児はさまざまな非言語的手がかりを用いて他者とコミュニケーションを行なっている。乳児と養育者(母親)との非言語コミュニケーションを母子相互作用mother-child interactionとよび,いろいろな角度から研究されてきた。乳児は,生後間もない時期から,養育者からの話しかけに対して,手足を動かしたり,声を出したり,表情を変えたりして,体全体を使って反応している。母親の方もまた,乳児の声やしぐさを敏感に読み取り,タイミング良く応答する。こうした養育者と子どもの間に見られる同調的相互作用は,エントレインメントentrainment(引き込み現象)とよばれる。

 新生児微笑neonatal smilingとよばれる現象もまた,親子のコミュニケーションにつながる行為の一つといえる。これは,新生児期に見られるもので,自発的あるいは生理的微笑ともよばれる。必ずしも人に向けて発せられたものではなく,生理的な意味合いの強いものと考えられる。しかし,微笑を見たおとなの側は,これを乳児からの社会的なメッセージとして受け止め,乳児に対して愛着感情や養育行動を促される。生後3ヵ月ころには,乳児の微笑は人に向けて発せられるようになり,相手がほほえめば自分もほほえみ返すというように,相互的なものとなる。

 生後2~3ヵ月ころになると,乳児は,養育者が喜びを表わす表情や発声をしたり,怒りを表わす表情をしたりすると,同じような情動的反応を示すことがある。また,養育者が優しい表情で乳児をあやしているときに,突然,無表情になって,声を出さないで乳児の顔を見つめると,乳児は体をよじったり声を出したりして,相手が再び働きかけてくれるのを求める反応を示す。さらに生後4ヵ月ころには,乳児と養育者との間で,音声によるターンテイキングが成り立つようになる。すなわち,両者が交替で声を出し合って,会話をしているかのような音声相互コミュニケーションができるようになる。

 このように,乳児は生後数ヵ月の間で,さまざまな情報源(養育者の視線,表情,声の大きさ,高さ,質,イントネーションなど)を基に,養育者の情動状態を読み取り,反応するようになる。また,自らも養育者に対して積極的にほほえみかけたり,声を出して相手の反応を待ったりするようになる。

 こうした前言語期の乳児のコミュニケーション能力の発達には,乳児が生得的にもつ行動傾向や認識能力だけでなく,乳児のさまざまな行動や情動表出に対して,タイミング良く応答してくれる他者(養育者)の存在が重要である。自分がほほえめばほほえみ返してくれる,声を上げれば応じてもらえるといった応答的環境によって,乳児はよりいっそう,積極的に人とかかわっていくことを動機づけられる。また,このような応答的な環境を基盤として,養育者と子どもとの間に安定した愛着関係が築かれてゆく。

【母子相互作用の文化差】 ストレンジ・シチュエーションとよばれる,親子の愛着関係を見る実験手続きにおいて,日本人乳児は,アメリカ人乳児に比べて,母親と分離された際により強く不安を示すという(Takahashi,K.,1986)。日米の乳児において,こうした反応の差が見られた原因として,日米の子育ての習慣の違いがかかわっているのではないかと考えられている。

 アメリカでは,乳児が小さいころから,一人で別室に寝かせられたり,ベビーシッターに預けられたりして,母子が分離する機会が多く与えられる。一方,日本では,母親が乳児の隣で寝る添い寝の習慣があり,乳児が眠っている間でも,母親は乳児と同室にいることが多い。また,乳児の世話をするのは多くの場合が母親であり,ベビーシッターなどの不特定の人に預けられることは少ない。また,日本人の母親は母子分離の場面を含む実験に参加する際,アメリカ人の母親に比べて,緊張や不安を感じやすいという(氏家達夫,1987)。こうした母親の情動状態が,声の調子や表情などを通して子どもに伝わり,子どもの不安を高めることにつながるのかもしれない。

 乳児に対する母親の語りかけの内容にも,日米の母親で違いがあるようである。ファーナルドFernald,A.らの実験(1993)では,母親が,子どもと新しい玩具で遊ぶ際に,どのようなことばかけをするのかを観察した。その結果,アメリカの母親は,「これは○○(玩具の名称)」「これは何か」のように,玩具の名称を教えたり,質問したりすることが多かった。一方,日本の母親は「ワンワンね」「こんにちは,って」「いい子いい子,してね」のように,社会的なやりとりや,情緒的コミュニケーションを促すことばかけが多く見られた。こうした情緒的コミュニケーションに重きをおく傾向は,日本人特有の母子関係を反映したものであろう。母親が子どもの視線や発達水準にまで下がって,同等の立場になって遊びを展開するということもまた,日本人母子に特徴的な現象であるのかもしれない。【対人コミュニケーションinterpersonal communication】 対人コミュニケーションの基本の要因は,送り手が受け手にメッセージを伝える記号化と,受け手がその意味を読み解く解読から成る。これらのステップが繰り返されて,コミュニケーションが成立する。メッセージの送り手と受け手は,固定的でなく交代的であり,記号化と解読はそれぞれが因果の流れを成す。送り手の要因として,①パーソナリティ,②記号化・解読のスキル,③感情・態度,④知識,⑤社会的・文化的脈絡などが考えられる。①から④は,個人の要因である。⑤は状況要因で,その状況に適切な行動があり,状況がコミュニケーション行動を規定すると考えることもできる。メッセージは発話,視線,顔の表情,ジェスチャー,姿勢など身体部位に由来するチャンネルを選択して表わされる。電話などのような非対面的コミュニケーションnon-face-to-face communicationと,対面して相互作用する対面的コミュニケーションface-to-face communicationとでは,用いることのできるチャンネルは大きく異なる。

 人はメッセージに含まれる情報を,自己の態度,知識,過去の経験などに基づくフィルターを通して解釈するので,意図が適切に伝わらないことが少なくない。したがって,自分の意図を伝えるためには,メッセージを適切に記号化し,さらに相手の意図しているとおりに解読するスキルを高める必要がある。コミュニケーションをうまく行なえてこそ,人間関係もそれぞれの目標も達成される。

【対人コミュニケーションの特徴と構造】 バグーンBurgoon,J.K.(1985)は,非言語コードをアナログ的,言語コードをデジタル的と見ている。アナログ的である非言語コードは,①自然に由来する有用な,②無限で,③連続した範囲から成るのに対し,デジタル的である言語コードは,①分離し,②任意に限定された単位の,③有限のセットから成る。

 さらに,非言語シグナル・システムにユニークな特質として,以下の五つを挙げている。①非言語行動は図像的iconicである。②いくつかの普遍的な形態と意味がある(どの文化,社会にも通用するものがある)。③同時に多くの様式でメッセージを伝達することが可能である。④直接的な感覚刺激に対する受容力がある(非言語シグナルの多くは認知的媒介なしで,直接的で自動的な反応を引き起こす)。⑤言語メッセージよりもより自発的に記号化される(意図の曖昧さを多く含んで伝えられる)。

 なお,非言語行動と言語行動が矛盾しているときには,非言語行動によって本音が漏れ出すことが多い。VCは,その文意,語義が問題とされるもので,意図的で意識される程度が高い。NVCは,視線のほかにも音声の形式的側面(発言と沈黙のタイミング,抑揚,大きさなど,近言語的特徴),顔の表情,ジェスチャー,姿勢や動作,身体接触,対人距離や空間行動spatial behavior(座席の位置,縄張りなど),外見(容貌,スタイルなど),服飾や化粧,さらには匂いやインテリアなど多くのチャンネルを含み,それに応じた多様な伝達特性がある。

 対面場面を基本とすると,音声を伴うか否かで分類できる。音声によるコミュニケーションのうち,文脈に無関係な音声,言い誤り,語や音の省略,繰り返し,間投詞などが感情的な動揺,不安,緊張を示す。

 視線gaze,lookは,暗黙裡に多くの意味を伝える重要なチャンネルである。音声や身体接触以外の多数のチャンネルによるメッセージは目を通じて入力される。視線は多くの情報を伝えるとともに,他のNVCに比べて独自の機能をもっているといえる。とくに論理的・意識的な情報伝達というよりは,好意や嫌悪などの感情をうまく伝えるチャンネルと考えられている。

 表情facial expressionは,相手に対する好意,喜び,怒り,恐怖などの感情を適切に表出し,その表情を認知することは,円滑な対人関係を展開していくうえで欠かせない。臨機応変にその時々の感情を豊かに表現できることは,対人的な関係を円滑に運営していくうえで望ましい。

【NVCの機能】 対人コミュニケーションには,いくつかの機能がある(Argyle,M.,1972)。基本としては,VCとNVCとは独立ではなく,メッセージの送受信は一体としてなされている。第1に,社会的状況を調節する機能である。対人態度を表現する機能,自己の感情状態を表現する機能,自己提示機能である。対人態度を表現する機能とは,非言語行動によって,相手との関係が優位-劣位,好意-非好意かを示すことである。自己の感情状態を表現する機能とは,直接的に他者に向けられるものではなく,単に個人の状態を示す。たとえば,サッカーの試合でボールをパスすることなく,確実にシュートを決める自信があれば,他者がその人のゴールを見据えている視線,顔の表情を見れば,明らかに自信のほどがわかる。自己提示機能とは,自己の地位,仕事,パーソナリティなどについての情報を伝えることである。出かける際にどのような服装にするかで,会う相手との関係をどうとらえているかがわかる。なお,NVCの直接性(活発さ)は,相手との親密さが上昇する時期には直線的に高まるが,親友,安定した恋人,夫婦など安定した関係にあってはコミュニケーションは多くはならないというように曲線的な関係にあることがわかっている。

 第2に,NVCはVCを支える機能をもつ。VCに際して,音声や動きを調節して相手にわかりやすく納得性をもたせる機能,相手の理解状況や反応などを知って,話の進め方を調節するフィードバック機能,注意を払って傾聴していることを知らせる機能がある。会話中にことばとことばの間に「間」をおいたり,相手の様子を見ながら話すリズムやスピードを調節して,話をわかりやすくすることなどが当てはまり,これは記号化や解読以上に高度なスキルともいえる。

 第3に,NVCはVCの代替となる。これには,サイン言語と神経症的兆候表現がある。前者は,VCが不可能な状況で,非言語行動が言語の代用ツールとして使われる。最も典型的な例が,言語に障害のある人の用いる手話である。後者は,精神科医が患者の訴える言語報告と同時に,患者の示す症状としての動作や行動を手がかりとして診断することなどである。

【社会的スキルの向上】 対人コミュニケーションは,どのような場面であれ,そこにいる人びとの目的を達成するために欠かせない。しかも,コミュニケーションをどれだけ適切に用いることができるのかは,社会的な活動に大きな影響を与える。そして,これは学習によって向上させることができる(一般には,社会的スキル・トレーニングとかコミュニケーションスキル・トレーニングといわれる)。その方法は難しくはなく,自分が気づいていないコミュニケーションの特徴を自覚する,少しだけ表現の程度を強くする,対人場面において表現と解読を集中的に体験することで容易に向上できる。どのような意図をもっていても,相手に伝わらなければコミュニケーションは成立しない。 →性差 →対人関係 →表情
〔仲 真紀子〕・〔内田 伸子〕

出典:最新 心理学事典
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