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グループ・ダイナミックス

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

グループ・ダイナミックス
group dynamics
集団生活や集団活動において,その集団ならびに集団内メンバーの行動特性を規定している諸法則や諸要因を科学的に分析,研究する分野。特に社会心理学上で問題となっている概念で,場理論基礎としつつ,産業や教育分野で広く実践的に応用されている。具体的には,集団内でのメンバーの動機づけコミュニケーション対人関係集団構造リーダーシップ集団規範,集団の雰囲気などや,これら相互間の関係の解明が目指されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)

グループ・ダイナミックス
ぐるーぷだいなみっくす
group dynamics
集団力学ともいう。単に集団の性質の記述や分類を行うだけでなく、その動態に関する力学的性質を分析し、人間の集団内行動や、集団現象の変化を支配する法則を明らかにしようとする社会心理学の一領域。基本的には、(1)集団生活の場にはどんな性質の「力」が働いているか、(2)どんな力が集団生活の「変化」をつくりだすか、(3)どんな力が変化に対する「抵抗」をつくりだすかという三つの設問が研究の出発点である。これらの研究には、理論的研究、実験的研究、および望ましい集団生活の形成を目ざす実践的・応用的研究が含まれている。[大塩俊介]

基礎的研究

この構想はアメリカの社会心理学者レビンによって創始された。彼は、個人や集団の行動を、それに効果を及ぼす相互依存的な諸力の総体(力学的な場)の関数として説明しようとする場理論field theoryを導入し、集団現象を説明するための古典力学的な概念体系を発展させ、グループ・ダイナミックスの基礎理論を準備した。また集団に関する実験的研究についての観察・分析の技術も多く開発し、1930年代後半のアイオワ大学児童福祉研究所における初期の研究として、専制、民主制、放任制などのリーダーシップが、異なった集団的雰囲気をつくりだし、成員の態度・行動、集団の構造、モラール(志気)、生産性にさまざまな効果をもつことを明らかにした実験的研究は有名である。そのほか食習慣の変化や工場における生産性やモラールの向上に及ぼす集団決定の効果などに関する研究もよく知られている。
 その後、彼が1945年に創設した、マサチューセッツ工科大学のグループ・ダイナミックス研究所を中心として、彼の死(1947)後もカートライトDorwin Philip Cartwright(1915― )らによって多くの研究がなされてきた。主要な研究主題としては、「集団目標」の性質と「集団移行」の関係、「集団凝集性」を変化させる諸条件と成員の行動への影響、「集団標準」の形成と成員の行動を斉一化させる「集団圧力」の機能、集団内コミュニケーション構造の違いが成員の行動に及ぼす効果などがあげられる。
 レビンはまた、さまざまな研究から得られた法則的知識を、現実の家族や人種関係にみられる葛藤(かっとう)的事態の解決や、工場、コミュニティ、学級などにおける生産性の向上のために適用する、応用科学的な社会工学social engineeringの可能性を強く提唱した。それは、研究者と集団管理者(リーダー)との共同研究体制によって、実践、研究、事態の変化にあたる指導者の訓練の三位一体からなる研究計画であり、一般に、事態の科学的診断―変化のための一般計画の決定―討議―事実発見―計画の修正というフィードバックのプロセスからなっている。彼はこれをアクション・リサーチaction researchとよんだ。[大塩俊介]

その後の展開

その後の研究動向は、しだいにレビン学派の枠を越えて拡散する傾向を示している。すなわち、第一にそれは、場理論モデルのほかに、相互作用理論、システム理論、精神分析理論、ソシオメトリー理論、認知理論などを取り入れていること、第二に、一般理論への志向のほかに、特殊理論の発展を目ざす研究、成員間の認知的不協和に関する研究、社会的勢力に関する理論的・実験的研究などが多く発表されていること、などにその動向をうかがうことができる。このような拡散的状況を統合しようとする試みも、ショーMarvin E. Showの研究などにみられるが、その主要な課題領域は、集団の形成過程、構造化の過程などに要約されており、グループ・ダイナミックス研究は、小集団研究の一般的発展へ収斂(しゅうれん)する傾向を示している。[大塩俊介]
『K・レヴィン著、末永俊郎訳『社会的葛藤の解決』(1954・創元社) ▽K・レヴィン著、猪股佐登留訳『社会科学における場の理論』(1956・誠信書房) ▽D・カートライト他著、三隅二不二他訳・編『グループ・ダイナミックス』(1959・誠信書房)』

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グループ・ダイナミックス
グループ・ダイナミックス
group dynamics
レビンLewin,K.(1947)が提唱した人間の集団生活に関する社会科学的アプローチを指す。集団力学と訳される。集団の基本的な特性,集団発達の法則,集団と個人の相互作用,集団と集団の関係性,集団とより上位の組織や諸制度との関係を対象とする研究として位置づけられる。実験や調査による実証的方法を重視し,集団生活の力動的な側面に注目しながら,幅広く多様な社会科学と連携し,得られた知見を社会的に応用して現実問題の解決を指向するところに特徴がある。

 レビンは,人間の行動(B)は,人(P)とその環境(E)の関数として決まると考え,B=f(P,E)と定式化している。そして,人とその環境から成る場の全体性を,その個人にとっての生活空間life spaceとよび,複数の人びとが集まると,各人の生活空間が合成され,一つの社会的「場」が生まれるとする場の理論field theoryを提示した。場の理論は位相力学topologyに基づいて発想されており,トポロジー心理学topological psychologyとよばれることもある。社会的場は,人と人,そして人と環境との相互作用によって絶えず変動しており,その変動の様相と法則性の探究がグループ・ダイナミックスのめざすところとなる。

 方法論としては,アクションリサーチaction researchを重んじる。アクションリサーチは,現実場面をていねいに観察して,そこから理論的検討課題を取り出して仮説化し,実証的検討を加え,得られた知見を再度現実場面に持ち帰り,現実の問題解決に改善をもたらすか現場での検証を行なって,さらに理論的検討を要する課題を見いだす。現場と研究室とを行き来しながら,現実問題の解決をめざす取り組みであり,グループ・ダイナミックスを特徴づける方法論である。こうして得られた知見は,体験学習を通して対人関係改善やリーダーシップ向上を図るTグループTraining groupをはじめとする実践的応用の取り組みの基盤となっている。

 かつては論理実証主義的なアプローチが主流であったが,近年は社会構成主義的なアプローチによるグループ・ダイナミックス研究が活発に行なわれている。その特徴は,生活空間の中で人と環境をミクロとマクロとして対置させ,区別して考えるのではなく,人と環境を初めから一つの生活世界として相互に混融したものとしてとらえるところにある。そして,客観的で実証的な測定よりも,ナラティブなデータやエスノグラフィーなどに依拠する質的研究の手法を取り入れた研究も数多く報告されている。

 グループ・ダイナミックスの主たる研究テーマとしては,成員が認知する集団の魅力度を意味する集団凝集性group cohesivenessに関する研究をはじめとして,集団圧力や集団規範が成員の同調行動に与える影響の研究や,集団目標が成員の動機づけに及ぼす影響に関する研究,勢力構造やコミュニケーション構造,ソシオメトリック構造など集団の構造的特性に関する研究,そして集団の目標達成を促進する影響力であるリーダーシップleadershipに関する研究等がある。この他にも,集団内の葛藤解決,社会的手抜きや社会的促進,組織集団における情報処理過程,チームワークなど,多様なテーマで研究が行なわれてきた。また,小集団を対象とした研究のみならず,集団間の紛争解決や偏見解消に関する研究や組織の問題解決,あるいはコミュニティの生活改善など,より大規模な集合体および生活空間を対象とする研究も行なわれている。 →集団 →集団意思決定 →同調
〔山口 裕幸〕

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