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ギリシア語【ギリシアご】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

ギリシア語
ギリシアご
Greek language
ギリシアの国語で,ギリシア本土,ならびにトルコ,アルバニアなどにも住むギリシア人の用いる言語。系統的にはインド=ヨーロッパ語族に属し,一つの語派をなす。 24から成る独特のギリシア文字を用いる。最古の文献は,前 14世紀にさかのぼる,ミノア線状B文字で書かれた粘土板。この言語をミケーネ・ギリシア語と呼ぶが,なお不明の点が多い。ホメロスの『イリアス』や『オデュッセイア』など,前8世紀以降の文献により知られるものを狭義の古代ギリシア語と呼び,いくつかの方言に分れていたが,そのなかで,アテネの政治的優勢とアッチカ文学の隆盛を背景として,アッチカ方言が広く行われるにいたった。アレクサンドロス大王の東征以後,このアッチカ方言を基礎とする共通語コイネーが広く西アジアにも及んだ。現代ギリシア語は,このコイネーが中世ギリシア語 (ビザンチン・ギリシア語) の時代を経て発展したものであるが,文法,語彙の点で互いに異なる口語体ディモティキと文語体カサレブサの併用という問題をかかえている。古代ギリシアの文化遺産は現代にも深く影響を及ぼし,古代ギリシア語は西洋の教養ある人々に学ばれてきた。また,学問用語の多くがギリシア語からつくられている。

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世界大百科事典 第2版

ギリシアご【ギリシア語 Greek】
インド・ヨーロッパ語族の一語派。その言語はバルカン半島南端のギリシア本土からクレタ島を中心とするエーゲ海の島々はもとより,植民によって非常に古くから小アジアの海岸地帯に広まり,さらに黒海南岸の町や,シチリアを含む南イタリア一帯にも分布していた。その歴史は古代から現代に及び,文献の豊富さはインド・ヨーロッパ語族中でも傑出している。古典ギリシアと中世のビザンティン帝国,そしてキリスト教教会と,その文化は,西欧世界の形成にはかり知れない影響をあたえたが,言語的にもその遺産はきわめて大きい。

出典:株式会社平凡社
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世界の主要言語がわかる事典

ギリシアご【ギリシア語】
インドヨーロッパ語族に属する言語で、単独で語派を形成。古代ギリシア語はサンスクリットヒッタイト語と並んでこの語族の古い層に属し、その資料は紀元前1200年ごろのミュケナイ文明の粘土板文書(線文字B)にさかのぼる。前8世紀にはホメロスの叙事詩がうたわれ、諸方言が並立するなか、前5世紀にギリシアの政治的中心となったアテナイ(アテネ)の作家たちが、アッティカ方言を洗練された文章語(古典ギリシア語)として完成させた。前4世紀以降になると、アッティカ方言をもとに東地中海世界の共通語としてコイネー(共通ギリシア語)が成立、のちにそれがビザンティン帝国(東ローマ帝国)の公用語と、民衆語のコイネーに分化した。19世紀にオスマントルコから独立したギリシアでは、古典ギリシア語をモデルにしたカタレブサ(純正語)と、一般人の共通語として体系化されたディモティキ(民衆語)のいずれを公用語とするかで対立が続いたが、1976年から後者を公用語としている(現代ギリシア語)。キプロスの公用語でもあり、話者数は1200万人。古典ギリシア語は典型的な屈折語で、名詞や形容詞は性・数・格、動詞は人称・数・時制・相・法にしたがって曲用する(現代ギリシア語では、双数、与格、希求法などは消滅)。派生や合成による高い造語能力をもつ。表記にはフェニキア文字からつくられたギリシア文字が使われる。

出典:講談社
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日本大百科全書(ニッポニカ)

ギリシア語
ぎりしあご
Greek
梵語(ぼんご)、ラテン語、ゲルマン諸語、スラブ諸語などとともに、インド・ヨーロッパ(印欧)語族に属する言語。[田中利光]

外的な歴史

ギリシア語民族がギリシア本土に入ったのは、およそ紀元前2000年をすこし下ったころだと、一般には考えられている。
 前8世紀末以来の金石文などによって、多くの方言に分かれていたことがうかがわれるが、次のように大別される。
〔1〕東ギリシア方言、(a)イオニア・アッティカ方言、(b)アイオリス方言、(c)アルカディア・キプロス方言、
〔2〕西ギリシア方言、(a)北西ギリシア方言、(b)ドーリス方言。
しかし、こうした分布は古くからこのように固定していたわけではなく、〔1〕(a)の特徴の成立は比較的新しく、古くは〔1〕(a)と〔1〕(c)はより近い関係にあったと考えられること、および〔1〕(b)が〔1〕(a)および〔1〕(c)に近い特徴を有しているのは、〔1〕(a)による比較的後の影響によるもので、むしろ古くは〔2〕グループに近かったと考えられること、および〔2〕(b)の歴史時代の分布は比較的新しいことから、古くは(1)北ギリシア方言(アイオリス・北西ギリシア・ドーリス方言)と(2)南ギリシア方言(イオニア・アッティカ・アルカディア・キプロス方言)という分布だったのではないか、とする考えが比較的有力である。
 前1200年ごろの線文字B文書によって知られるギリシア語には、方言差がみられず、これは南ギリシア方言に近い。
 前8世紀中葉から前6世紀中葉にかけての大植民活動によって、西方はシチリア、南イタリア、さらにフランス南岸やスペイン東岸、北方はエーゲ海北岸や黒海沿岸、南方はアフリカ北岸キレナイカなどにギリシア語は広まったが、それぞれ母市の方言の特徴を示している。
 これらの方言のうち、イオニア方言を基調とし、アイオリス方言などを交えて、叙事詩『イリアス』と『オデュッセイア』が前8世紀にはまとめられ、その用語は以後の叙事詩その他に対して、標準語として大きな影響を与えた。アイオリス方言にも優れた叙情詩が生まれ、ドーリス方言は合唱隊歌の用語の基礎になった。これらの文学方言は、いずれも他の文学方言の要素を交えるなど、多かれ少なかれ「人工的な」もので、一定の時および地域で実際に話されていた方言と一致するものではない。
 前6世紀には、イオニアの地に散文用語が形成され、ギリシア世界に広く用いられるようになった。前5~前4世紀にはアッティカ方言において、優れた悲劇、喜劇、散文作品が生まれた。この期のアッティカ方言はとくに古典ギリシア語といわれる。
 アッティカ方言は、アテナイが政治的、経済的、文化的に優勢になるにつれ、有力になった。ギリシア世界がしだいに衰退して、前4世紀後半マケドニアによって統一されると、アッティカ方言を基礎とし、イオニア方言の要素を交えた共通語(コイネー)が形成され、他面、ごく特別な例外は別にして、諸方言はしだいに消滅していった。アレクサンドロス大王の東征を契機に、コイネーは、ギリシア本土、マケドニアはむろん、トラキア、小アジア、アルメニア、シリア、パレスチナ、エジプト、メソポタミアから、一時はインドのインダス川流域にまで至る広大な地域に行われるに至った。前3~前2世紀に訳された『七十人訳旧約聖書』および後1世紀後半に記された『新約聖書』の用語も、基本的にはコイネーである。ごく大まかに、後6世紀なかばのユスティニアヌス帝のころまでが、このコイネーの時代とされる。
 こうして、しだいに古典ギリシア語から乖離(かいり)していったが、これに対抗して、古典ギリシア語に倣おうとする運動がおこり、こうした擬古主義(アッティカ主義)に基づく作品もようやく多くなって、後2世紀にはこの傾向は頂点に達した。4世紀から1453年までのビザンティン帝国の公用語は、この擬古主義の影響を深く受けており、ビザンティン・ギリシア語といわれる。
 コイネーはビザンティン時代に分化し始めたと考えられる。そして、スラブ、イスラムの進出、トルコの侵入・支配によって、通用する範囲を狭められ、かつ分化を重ねて成立したのが現代のギリシア語諸方言である。現在行われる範囲はギリシア共和国、キプロス共和国、それにイスタンブールのギリシア人居住区である。なお、イタリア半島の「爪先(つまさき)」と「踵(かかと)」のそれぞれにわずかに行われているギリシア語は、ペロポネソス半島南東のごく一部に行われているツァコニア方言とともに、コイネー以前の方言に由来する。
 1829年ギリシアは独立を回復したが、このときにも、一方では古典ギリシア語をモデルにした古風な公用語が定められた。これをカサレブサ(純正語)という。これに対して、ペロポネソス半島の諸方言を基礎にした共通語もしだいに形成されていった。これをディモティキ(民衆語)という。このほかに中間的なもの、超純正語的なもの、超民衆語的なものがあり、どれを公用語とするかをめぐって深刻な「言語問題」がおこったが、近年カサレブサが公用語の地位を退き、1976年9月以来、ディモティキがすべての学校で教えられている。[田中利光]

ギリシア語の特徴

古典ギリシア語を中心に述べ、時代により、方言により異なる点は適宜補足する。[田中利光]
音韻
印欧祖語の*yを失った(*印は推定音であることを示す)。*wも早く失われた(線文字B文書などではなおよく保たれている)。*sは閉鎖音の前後、語末以外では、語頭ではhになり、語中では失われた。そのため、これらの音を介して並んでいた二つの母音が一つに融合した。*kw*gw*gwhは位置によって、p、b、ph、またはt、d、th、またはk、g、khになった。語末の子音はn、r、s以外はすべて脱落した。母音は祖語の姿をよく保存しているが、古典ギリシア語では、*に、*ouはに、*はr、i、eのあと以外ではになった。かくして、母音はとai、auなどの二重母音、子音はb、p、ph、d、t、th、g、k、kh、s、h、l、r、m、n。アクセントは高低アクセントで、位置も制限がなかったが、語末から3音節以内の音節に限られるようになった。
 コイネーではアッティカ方言のttにイオニア方言その他のssがとってかわった。はiに、aiはe、oiはになった(母音の長短の区別は後3世紀ごろまでには失われて、はaに、はoに、はuになった)。そこで母音はa、e、i、o、u、の六つ。さらに、auはavまたはafに、euはevまたはefに、ph、th、khはそれぞれf、θ、xに、b、d、gはそれぞれv、、γになり、hは失われ、はiになるなどの変化を経て、またアクセントは強弱アクセントに移行して現代に至っている。[田中利光]
形態
実体詞、形容詞、代名詞、動詞、副詞、前置詞、接続詞、小辞の8品詞がある。初めの四つは活用する。実体詞は性(男、女、中)を有し、数(単、複、双)と格(呼、主、属、与、対)によって、形容詞はさらに性によっても活用する。代名詞のうち人称代名詞は実体詞のように、指示代名詞などは形容詞のように活用する。
 動詞は数、人称(一、二、三)、相(能動、中動、受動)、法(直説、接続、希求、命令)、時称(現在、未完了過去、未来、アオリスト〈無限定過去〉、現在完了、過去完了、未来完了)によって活用し、さらに各相の、現在、未来、アオリスト、完了時称のそれぞれに、不定詞、分詞がある。そのほかに動詞的形容詞がある。こうした活用があるため、語順は比較的自由である。また、不定詞、分詞がさまざまに用いられて、しなやかで、こみいった表現が可能である。
 線文字B文書では位置と道具を表す格があったが、ともに消滅し、その機能は与格が果たすことになった。双数(一つと三つ以上に対して、二つを表す)を残しているのはアッティカ方言の古風な特徴であるが、コイネーでは失われ、希求法も若干の場合に用いられる以外は消滅した。アオリストと現在完了の区別もあいまいになり、現代では失われている。同じく現代では与格も用いられなくなり、その機能は属格、あるいは前置詞と対格の組合せで表される。未来と不定詞も失われ、その働きは小辞と接続法の組合せで代用されるようになった。また、数、人称、相、法、時称のほかに態(アスペクト)によっても活用するようになっている点が注目される。語順はなお比較的自由である。[田中利光]
語彙
文法形態と基礎的な語彙(ごい)を別にすれば、かなりの数の語彙は借用語であるらしい。そのうちの多くは、ギリシア語民族到来以前に行われていた言語からのもので、植物、動物、鉱物、容器、料理、衣服、履き物、武具、家屋建築、海事、歌舞音曲、宗教、神名、社会制度など広範な分野に及んでいる。しかし古典期のギリシア語に入った借用語はきわめて少ない。
 コイネーのなかには、アッティカ方言以外の方言、とくにイオニア方言から多くの単語が入り込んだ。
 ビザンティン時代の初期には多くのラテン語が入った。合成、派生による造語能力はあらゆる時期を通じて旺盛(おうせい)で、きわめて豊かな語彙がつくりだされてきたが、ビザンティン後期にも、手持ちの要素を組み合わせて、豊富な合成語が形成された。
 ディモティキの単語の大部分は古来のものである。古来の要素を組み合わせて新しくつくられた派生語、合成語も多い。カサレブサを通して入ったものもある。そのほか、トルコ語、イタリア語、フランス語などからの外来語もみられ、英語からのものがしだいに増加してきている。
 ギリシア語は、現在もなお、国際社会に対して、ラテン語と並び、学術用語を豊富に提供し続けているが、それは今後も変わらないのではないかと思われる。[田中利光]
『田中美知太郎・松平千秋著『ギリシア語入門』改訂版(1962・岩波全書) ▽田中美知太郎・松平千秋著『ギリシア語文法』(1968・岩波書店)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
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