Rakuten infoseek

辞書

イタイイタイ病【イタイイタイびょう】

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

イタイイタイ病
イタイイタイびょう
1956~57年頃をピークにして富山県神通川流域に発生した公害病。激痛や病的骨折に襲われて運動不能状態となり,さらに進行すると死にいたる。特に中年の多産婦に多くみられた。 1967年岡山大学教授の小林純は地元の医師萩野昇との共同調査の結果として,三井金属鉱業神岡鉱業所の廃水によるカドミウムの慢性中毒症と発表。次いで 1968年5月厚生省も同一見解を発表し,公害病として認定された。ただし,カドミウム単独中毒説は疑問視されている。被害者中 31人は 1968年1月三井金属鉱業を相手に損害賠償請求の訴えを起こし,1971年富山地裁は三井側に 5700万円の支払いを命じた。また,1972年8月の第1次控訴審でも患者側が勝訴し,訴訟は事実上終結した。なお,この裁判は四日市喘息,新潟水俣病 (→阿賀野川水銀事件 ) ,熊本水俣病の裁判とともに四大公害裁判といわれ,ことに四日市公害訴訟とイタイイタイ病訴訟の判決は,公害裁判上画期的なものであり,その後のこの種の裁判に大きな影響を与えた。

出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
Copyright (c) 2014 Britannica Japan Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの記述は執筆時点でのもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

知恵蔵

イタイイタイ病
岐阜県神岡町(現・飛騨市)の神岡鉱山から排出されたカドミウムが神通川に流れ、川水を灌漑用水に使用していた富山県の農地土壌が汚染された。そこで産出された米を長年摂取した中高年の女性多数が、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を伴う骨軟化症を発症。患者が「いたい、いたい」と骨の痛みを訴えて死ぬことから地元の萩野昇医師が「イタイイタイ病」と名付けた。汚染米から多量に摂取したカドミウムが腎臓皮質に蓄積されると、尿中のたんぱく質、糖分、カルシウム、リンなどの栄養分を再吸収する尿細管が障害を起こす「カドミウム腎症」になる。そして骨の成分であるカルシウムやリンが尿中に流出して欠乏するため骨がもろくなる。大正時代に発生し、罹患者は1000人以上と推定されるが、発見は1955年。68年に日本の公害病第1号に認定された。2007年7月現在の認定患者は191人(うち生存者4人)、要観察者は335人(うち生存者2人)だが、現在でも新規患者の認定が続いている。イタイイタイ病患者は、石川県梯川(かけはしがわ)流域、兵庫県市川流域、長崎県対馬でも発見されているが、国は認定していない。カドミウム腎症は、全国各地の鉱山・精錬所周辺で発見されているが、公害病として認定されていない。近年、韓国や中国の鉱山・精錬所周辺でイタイイタイ病やカドミウム腎症の発見が報じられている。
(畑明郎 大阪市立大学大学院経営学研究科教授 / 2008年)

出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」

朝日新聞掲載「キーワード」

イタイイタイ病
富山県の神通川流域で、上流の神岡鉱山(岐阜県)の排水に含まれたカドミウムが原因で発生。腎機能が低下し、骨の維持に必要なリンやカルシウムが排出され、重くなると骨軟化症や骨折を起こし、全身に激痛が走る。2015年までに200人が患者に認定された。
(2018-05-07 朝日新聞 夕刊 2社会)

出典:朝日新聞掲載「キーワード」

デジタル大辞泉

いたいいたい‐びょう〔‐ビヤウ〕【イタイイタイ病】
富山県、神通川流域で発生した慢性カドミウム中毒。大正から昭和20年代にかけて多発。骨が冒され、痛みが激しく骨折しやすい。鉱山廃水が原因であることが解明され、昭和43年(1968)公害病に認定。

出典:小学館
監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
編集協力:田中牧郎、曽根脩
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

栄養・生化学辞典

イタイイタイ病
 富山県神通川中流域に多発した病気で,カドミウムの慢性毒性主因とされる.

出典:朝倉書店
Copyright (C) 2009 Asakura Publishing Co., Ltd. All rights reserved.
それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

世界大百科事典 第2版

いたいいたいびょう【イタイイタイ病】
富山県神通川流域の農村地区で,第2次世界大戦後の数年間を中心に,主として更年期以降の経産婦がかかったといわれる骨軟化症様の病気。全身の激痛を訴えることから,この病名が通称として用いられるようになった。1955年に河野稔らがこの病気を初めて学会に報告し,68年にはこの病気を神通川上流の三井金属鉱業神岡鉱業所より排出されたカドミウムCdに起因する公害病と認めた厚生省見解が発表された。
[症状]
 腰痛,下肢筋肉痛などで始まり,股(こ)関節の開排制限,アヒル様歩行などを示す。

出典:株式会社平凡社
Copyright (c) Heibonsha Limited, Publishers, Tokyo. All rights reserved.

大辞林 第三版

いたいいたいびょう【イタイイタイ病】
富山県神通じんずう川流域に発生した骨疾患。背骨や手足が痛み、骨がもろくなって容易に骨折する。鉱山廃水に含まれるカドミウムの体内蓄積によるものとされ、1968年(昭和43)公害病第一号に認定された。

出典:三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

日本大百科全書(ニッポニカ)

イタイイタイ病
いたいいたいびょう
富山平野の中央を貫く神通(じんづう)川両岸の一定地域に居住する40歳以上の農村女性、とくに多産婦に多発した疾病。初めは風土病と考えられていたが、1955年(昭和30)に発見者である地元の開業医萩野昇(はぎののぼる)と、協力者である東京の整形外科医河野稔(こうのみのる)によって初めて学会に共同発表されてから約10年後、カドミウムの体内蓄積が発病の基盤になっていることが明らかにされ、わが国の代表的な公害病として知られるようになった。
 症状は腰痛、背痛から始まり、しだいに股関節(こかんせつ)の痛みのため臀部(でんぶ)を振ってアヒルのような歩き方をするようになり、やがて歩行不能となる。また、ぶつかったり転んでも容易に四肢骨や肋骨(ろっこつ)に骨折をおこし、たび重なるとタコの足のように四肢が屈曲してしまう。体位を変えたり、談笑や咳(せき)などによっても全身に痛みがくるようになると、昼夜を問わず「いたい、いたい」と訴え続け、ついには栄養失調やその他の合併症で死亡する。なお、骨の変化のほかに腎臓(じんぞう)の尿細管の機能も冒され、尿中にタンパク、糖、カルシウムが増加する。骨折しやすい理由の一つにカルシウムの体外排出が考えられ、多産婦に多発したのも、妊娠中にカルシウムが胎児に多く奪われることが誘因とみられている。
 原因としては、患者の尿中にカドミウム量が異常に多いこと、神通川流域の水田土壌中のカドミウム量が他の河川流域に比べて明らかに高いこと、発生が神通川流域の一定地域に限られており、それが水田中のカドミウム濃度とよく一致すること、患者の発生地区では骨症状を呈していないが尿にタンパクや糖が出ている者が高率にみいだされており、これが産業現場でみられるカドミウム中毒の症状と一致することなどから、カドミウムがイタイイタイ病の基盤にあることが明白になった。その汚染源が、神通川上流の神岡にある亜鉛・鉛鉱山(三井金属鉱業株式会社神岡鉱業所)からの廃水であることも突き止められた。すなわち、廃水中のカドミウムが川や土地を汚染し、飲料水や米に混入して人体内に入り、発病まで20~30年間にわたってカドミウムが体内に蓄積されるわけである。しかし、発病にはカドミウムのほかに、栄養、労働、生活その他の環境条件が加わったと考えるのが妥当であろう。
 患者数については、1969年(昭和44)制定の「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」およびこれを引き継いだ1973年制定の「公害健康被害補償法」によって認定された患者数は194人(うち死亡者188人)となっている(2008年4月末現在)。それ以前の患者については実態がよく把握されておらず、第二次世界大戦後よりこの時期までに女性のみで100人近い死亡者が出たものと推定されている。[重田定義]
『萩野昇著『イタイイタイ病との闘い』(1968・朝日新聞社) ▽吉岡金市著『イタイイタイ病研究』(1970・たたら書房) ▽イタイイタイ病訴訟弁護団編『イタイイタイ病裁判1~6』(1971~74・文一総合出版)』

出典:小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)
(C)Shogakukan Inc.
それぞれの解説は執筆時点のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

六訂版 家庭医学大全科

イタイイタイ病
イタイイタイびょう
Itai-itai disease
(中毒と環境因子による病気)

どんな病気か

 富山県神通川流域、熊野地域住民の更年期以降の出産経験のある女性に多くみられた全身の痛みを主訴とする原因不明の奇病について、萩野昇らが1955(昭和30)年10月に初めて報告し、その存在が広く知られるようになりました。

 その後の研究の結果、1968(昭和43)年5月に厚生省(当時)は、「イタイイタイ病はカドミウムの慢性中毒により、まず腎臓障害を生じ、次いで骨軟化症(こつなんかしょう)を来し、これに妊娠、授乳、内分泌の変調、老化および栄養としてのカルシウム等の不足などが誘因となって生じたもので、慢性中毒の原因物質としてのカドミウムは、三井金属鉱業株式会社神岡鉱業所の排水以外には見当たらない」とする見解を発表しています。

 その後1971(昭和46)年2月からは「公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法」が施行され、医療等の救済が行われてきました。1974(昭和49)年9月からは「公害健康被害補償法」による医療救済等の措置が実施されています。

 これらの法によるイタイイタイ病の認定患者は2009年3月までに195名となっています。

原因は何か

 慢性カドミウム中毒とされています。食べ物や水を介して摂取されたカドミウムによりリンやカルシウムの代謝異常を伴う腎尿細管(じんにょうさいかん)機能異常(ファンコーニ症候群)が生じ、骨軟化症および骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を引き起こして、そこに妊娠、出産、低栄養などの誘発因子が加わることで本症が発生すると考えられています。

 神通川上流の三井金属鉱業神岡鉱業所から排出された廃水に含まれていたカドミウムによって汚染された飲料水や農作物を摂取することで、慢性カドミウム中毒になることが原因と考えられています。1955年以後は重症者はほとんどみられなくなり、近年、本症の新たな発症は認められていません。

 本病の原因物質としてカドミウムが最も強く疑われていますが、カドミウムの単独原因説には無理があり、低蛋白、低カルシウムなどの栄養上の障害も原因のひとつと考えられています。なお、動物実験での再現が困難なことから真の原因は解明されていません。

症状の現れ方

 腎臓の尿細管の再吸収障害と、骨の軟化症および粗鬆症の合併的変化がその主な病変とされています。主症状は疼痛で、腰痛や下肢の筋肉痛などで始まり、次第に各部に広がって、ひどくなれば、わずかに体を動かしたり(せき)をするだけでも激しい痛みを訴えるようになります。

 経過はきわめてゆっくりであり、捻挫(ねんざ)などの軽い外傷を契機に歩行障害を起こし、アヒルのような歩行から末期には歩行不能になり、寝たきりになります。わずかな外力で病的骨折を起こし、全身に多数の骨折のあった例もかつてはみられました。

 腎尿細管障害は、尿中のβ2­ミクログロブリンなどの低分子蛋白、糖、蛋白、アミノ酸の排泄が増えるのが特徴です。

治療の方法

 骨病変についてはビタミンD2の大量投与や活性型ビタミンD3による治療がおおむね奏効するため、悪化を繰り返す症例はあるものの、長期的には軽快する傾向があります。

松井 寿夫

出典:法研「六訂版 家庭医学大全科」
(C) HOUKEN CORP. All rights reserved.
それぞれの項目は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

イタイイタイ病」の用語解説はコトバンクが提供しています。

イタイイタイ病の関連情報

関連キーワード

新藤兼人[各個指定]工芸技術部門斎藤寅次郎マキノ雅広野村芳太郎中平康川島雄三市川崑清水宏鈴木清順

他サービスで検索

「イタイイタイ病」のスポンサー検索

(C)The Asahi Shimbun Company /VOYAGE MARKETING, Inc. All rights reserved.
No reproduction or republication without written permission.